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MRJ、ボーイングの"お膝元"シアトルで開発・試験へ

日本では量産初号機の組み立ても開始
MRJ、ボーイングの"お膝元"シアトルで開発・試験へ

開設記念式典で「鏡割り」に臨む森本社長(手前右から2人目)、インスリー知事(同左から2人目)ら(三菱航空機提供)

 三菱航空機(愛知県豊山町、森本浩通社長、0568・39・2100)は3日(米国時間)、国産小型旅客機「MRJ」の米国での開発拠点「シアトル・エンジニアリング・センター」(ワシントン州)を開設した。2017年4―6月に計画する量産初号機の納入に向け、16年春から米国での飛行試験を本格化する。
 同センターは150人体制。機体納入の前提となる「型式証明」の取得に向け、データ解析や設計への反映などを進める。シアトルは米ボーイングの本拠地で、経験豊富な技術者の力も借り、開発を進める考え。開設式典にはワシントン州のジェイ・インスリー知事らも出席した。
 三菱航空機は9―10月に愛知県営名古屋空港(愛知県豊山町)で試験機の初飛行を計画する。

量産初号機の組み立ても開始


【名古屋】三菱重工業は国産小型旅客機「MRJ」の量産初号機の組み立てを始めた。飛島工場(愛知県飛島村)で主翼など一部を組み立てており、2016年春からは同豊山町の最終組立工場を稼働させる。今秋からの飛行試験と並行して機体の量産も進めて、17年春に迫る全日本空輸(ANA)への納入日程を守る考えだ。MRJの量産開始は、部品製造や組み立てなど航空機産業の雇用拡大につながりそうだ。

 まず、飛島工場で主翼の組み立てに着手。今後は前部・中部・後部胴体といった機体の一部をそれぞれ製造。16年9月には松阪工場(三重県松阪市)で垂直・水平尾翼の組み立てを始める。両工場で組み立てた部材は愛知県豊山町の最終組立工場(建設中)に運び、エンジン、装備品などを取り付けて航空機の形に完成させる。
 同社はこれまで、MRJの試験機として飛行試験用5機と地上試験用2機の計7機を製造。14年10月には飛行試験1号機の完成披露式典(ロールアウト)を開いた。現在は強度試験や走行試験を実施中。これらの試験で安全性などが確認された部位を中心に、量産型機の生産に移行する。

月産10機


 量産は当初、月産1機ほどのペースで開始し20年ごろには月産10機に引き上げる目標。航空機の生産ラインは手作業が中心であり、MRJの量産は中堅・中小サプライヤーを含む航空機産業全体の雇用を押し上げそうだ。
 一方、三菱重工子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)は、9―10月に愛知県営名古屋空港(同)でMRJを初飛行させる計画。MRJはこれまで日本、米国、ミャンマーの6社から計407機を受注している。
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
何せ50年ぶりの国産機開発ですから、日本には航空機を開発する人的・設備的なインフラがそもそも整っていないという課題もあります。今後、MRJの開発・試験の現場は事実上、米国に移っていくことになります(あくまで製造の中心は日本ですが・・・)。中長期的には、こうした開発インフラも日本国内に取り込むことが大事になってくると思います。

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