有価証券全体のうち、15%を認知症患者が保有したら?

人生100年時代に注目される「金融老年学」、経済成長の足かせに警鐘

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高齢社会における金融サービスのあり方が問われている(写真はイメージ)
 「人生100年時代」と言われ、超高齢化社会の到来に直面する日本。長寿命化とともに、家計金融資産の約3分の2を60歳以上の世帯が保有する“資産の高齢化”も進展している。高齢化が深刻化する中で、注目を集めているのが「老年学(ジェロントロジー)」と呼ばれる学問だ。

 慶応義塾大学は16年、ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センターを設立した。「ファイナンシャル・ジェロントロジー」とは、高齢者の経済活動や資産選択など、高齢化によって発生する経済課題を、経済学を中心にしつつ関連分野と連携して課題解決を見出す新たな研究領域だ。同センターでは、経済学だけでなく、医学などを含めて総合的な見地から研究を進めている。

 駒村康平同センター長の現状認識は厳しい。高齢化による認知機能の低下が資産選択に影響を与えうることから、「高齢者個人の資産運用に影響を及ぼす」(駒村センター長)と警鐘を鳴らす。膨大な個人資産が正常に運用されずお金の循環を阻害すれば、「経済成長の足かせになる可能性もある」(同)。

 金融庁は18年7月「高齢社会における金融サービスのあり方について」と題した中間報告を発表した。家計金融資産の約3分の2を60歳以上の世帯が保有すると分析するほか、35年には有価証券保有者のうち70歳以上の割合が半分を占める時代が到来する可能性があるという。65歳以上の3人に1人が認知症になる可能性があり、有価証券全体のうち、15%を認知症患者が保有することになる。

 認知症になった場合の対策として成年後見制度がある。本人に代わり財産や権利を守り、本人を法的に支援する制度だ。ただ同制度の利用者は20万人にとどまっている。駒村センター長は「現行制度は利用しにくい」と指摘する。

 長寿化が進む中、資産や就労、世帯構成などが多様化しており、「モデル世帯」が存在しなくなっている。金融サービスはこうした多様化の対応が課題となる。高齢者が安心して資産を運用できる環境整備が急務となっている。

日刊工業新聞2019年1月1日の記事から抜粋

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