「フィンテック」普及の最大の敵は銀行の横並び意識?

足場固め急ぐ、金融機関

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 ITと金融サービスを融合した「フィンテック」という言葉が国内でも浸透してきた。海外では流通業やIT系企業が金融事業に進出したり、大手金融機関がITベンチャーを買収したり、ビジネスモデルに変化が起きている。日本の金融機関は動きが鈍かったが、規制緩和を視野に、大手行も力を入れ始めた。

 「精いっぱい、頑張ります」。ヒト型ロボット「ペッパー」はみずほ銀行の”入行式“で殊勝に挨拶した。銀行業界では初めての試みで、首都圏の5店舗に順次導入する。競合他社からは「客寄せに過ぎないのでは」と厳しい指摘もあるが、みずほ銀にとっては壮大な計画の一歩だ。
 
フィンテックプロジェクト。今回の入行式の看板の片隅にも小さく書かれていた。24日には持株会社に専門組織を立ち上げ、新しい金融ビジネスの創出を急ぐ。
 
「我々は、グーグルやフェイスブック、その他の企業と競合することになる」。米JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEOの言葉は海外では現実になりつつある。フィンテックの代表事例の電子決済には海外では多くの企業が参入。米グーグルや米アップルはモバイルの決済サービスを提供する。韓国サムスングループもモバイル決済を強化するため、米韓で買収を急ぐ。米スクエアなど新興企業も続々登場する。米アマゾンや中国のアリババ集団は決済にとどまらず、融資も手がける。
 
日本でも楽天が決済のほか、融資業務を開始。流通大手のイオンも決済サービスを展開する。金融機関が担っていた業務の中抜きが起きている。
 
海外では大手金融機関も新興勢に負けじと、ITベンチャーを買収するなど、ITとの垣根は低くなる。一方、国内の金融機関の動きは鈍く映る。本業以外でリスクを抱えることを銀行法が禁じていたからだ。「IT系や流通系企業は決済機能を使っていろいろなことができるが、こちらは規制で身動きが取れない」(全国地方銀行協会の寺澤辰麿会長)。

 こうした中、金融審議会が銀行の電子商取引やスマホ決済への参入を視野に、法改正の検討を始めた。規制緩和をにらみ、大手行の足場固めは始まっている。
 
三菱東京UFJ銀行は協業するベンチャーを発掘するコンテストを今年から開催。三井住友銀行は産業技術総合研究所とベンチャー企業の発掘で協業。主にロボット産業を対象にしており、フィンテックへの活用を視野に入れているのは明らかだ。地銀でも静岡銀行は2014年にはマネックスグループに出資。新たな決済サービスを模索するほか、異業種との従来にないサービスの提供も構想する。

 金融機関は体制を整え、中長期ビジョンを掲げるものの、具体化の時期は不透明だ。「規制が緩和されたとしても、他がやっていないことにはなかなか踏み切れない業界。ITに明るい人材も多くない」(メガバンク関係者)との声もある。ある地方銀行ではマーケティングにATMの利用情報や口座の履歴を使ってビッグデータ分析を試みようとしたところ、「業界で前例はあるのかと上からストップがかかった」(関係者)という。「大企業を顧客にかかえるメガはともかく、地銀はネット系銀行のリーテール部門の浸食が深刻になるのは明白なのに」と肩を落とす。フィンテックの普及には規制業種ならではなの横並び意識が最大の障壁になのかもしれない。

日刊工業新聞2015年7月23日金融面改稿

COMMENT

栗下直也
デジタルメディア局
編集委員

横並び意識が強いと言うことは、一気に普及する可能性もありますが。

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