自動車の軽量化を考える(4)炭素繊維-「i3」500万円というインパクト

炭素繊維は、もはや高級車向けではない。狙うは量産車向けの巨大市場

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東レのオートモーティブセンターに展示されているコンセプトカー「TEEWAVE AR1
 独BMWが炭素繊維を使った電気自動車「i3」は、500万円程度という価格帯もあって、市場に大きなインパクトを与えた。これまで自動車向け炭素繊維といえば、数千万円程度で、生産台数も少ない超高級車向けが中心だったからだ。PAN炭素繊維は日系メーカーで世界シェアの6割から7割を占めるとされる分野。各社とも自動車向けの本格的な拡大を視野に、研究開発を加速している。
 
 【年産2万トンへ】
 BMWの「i3」は三菱レイヨンと独SGLの合弁会社・MRC―SGLプレカーサーが三菱レイヨン大竹事業所(広島県大竹市)内で製造したプレカーサー(炭素繊維原糸)が用いられている。足元では旺盛な需要が続いており、現状で年産8000トン程度とされる生産能力は2016年度に約2万トンまで高まる見通し。
 
 量産車向けの自動車を意識した場合、加工プロセスの効率化が欠かせない。現在は高圧で焼き固めるオートクレーブ(硬化炉)法、型内に炭素繊維織物をセット後に樹脂を含浸して硬化させるRTM(レジン・トランスファー・モールディング)法、オーブン成形などが一般的な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の加工とされる。
 
 三菱レイヨンは熱硬化系エポキシ樹脂(2―5分硬化)を用いたプリプレグ(炭素繊維樹脂含浸シート)のプリフォームを金型で加熱・高圧プレスするPCM(プリプレグ・コンプレッション・モールディング)法を訴求する。
 
 【14年モデル採用】
 最近では、同法で製作したトランクリッドが外板部材として初めて日産自動車の高級スポーツ車「NISSAN GT―R」14年モデルへ採用されており、買収したチャレンヂ(埼玉県狭山市)において量産体制を整える。
 
 三菱レイヨン炭素繊維・複合材料事業部の坂下正人自動車複合材部長は「当面は適用する部材に合わせて加工方法を選択していくのではないか」と指摘する。18年ごろに月数千台規模の量産高級車をターゲットとし、加工法の進化を図る。
 
 炭素繊維トップの東レは名古屋市港区に自動車向け総合技術開発拠点「オートモーティブセンター」を構える。中に展示されてある電気自動車のコンセプトカー「TEEWAVE AR1」は、炭素繊維をはじめとした環境配慮製品をふんだんに用いた。
 
 センター内には表面品位の評価装置や、衝撃特性や耐久性を調べる歩行者保護試験機といった機器が並ぶ。山中亨所長は「共同開発機能や自動車用材料の試験片から部品レベルまで評価・解析する機能を持たせている」と話す。今春に買収手続きが完了した米ゾルテックの炭素繊維を使った研究も始まっている。
 
 【規模拡大狙う】
 帝人は炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた中間材料をプレス成形し、CFRPを1分以内で成形できる技術を持つ。吉野隆常務執行役員(東邦テナックス社長)は常々、「参入障壁のあるマーケットにいち早く参入したい」と強調する。
 
 同技術を活用し、米国において炭素繊維の工場建設を視野に入れる。ただ、量産車向けを意識した大型投資案件となるだけに、今後の動向が注目される。
 
 自動車の軽量化や燃費向上といった背景もあり、炭素繊維の適用が増えていくのは必至。そうした中、東レの山中亨所長は「単純に素材が置き換わるだけではなく、安全性や乗り心地など、副次的な効果をいかに付けられるかが大事だ」と気を引き締める。
 
 20年には現状の約3倍となる約14万トン程度まで高まるとされる炭素繊維の世界需要。技術革新によってコストを抑えられ、適用が本格化していけば、さらなる規模拡大の可能性も秘めている。

日刊工業新聞2014年09月15日 モノづくり面

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村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

軽量・高強度など軽量化素材として魅力は十分。加工コストや加工するリードタイムの長さがネックだが、徐々にハードルも下がってきている。ただ競合する鉄、アルミのようにリサイクルをどうするかは取り組むべき課題だ。

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