アジアの高炉事業に参入決定!日本の鉄鋼大手の狙いとは?
JFEがベトナムで一貫製鉄所建設。「海外市況は最悪に近い」(林田社長)が安定供給目指す
JFEスチールは30日、ベトナムの高炉一貫製鉄所建設計画に参画すると発表した。台湾プラスチックグループ(台北市)がベトナム中部のハティン省ケアン市に建設中の製鉄所(写真)に5%(約270億円)出資する。JFEは技術支援・供与を行うと同時に、製造した熱延鋼板や線材などを東南アジアの各拠点に供給する。
同社は2014年9月、ベトナムでの製鉄所計画への参画を断念。その後、別の台プラ事業で出資を検討していた。今春、17年度までの中期経営計画を開始。アジアを中心に粗鋼生産量を17年度に4000万トン、25年までに5000万トンまで引き上げる長期目標を掲げた。「今は厳しい局面だが、中長期的な成長戦略に立脚した」(岡田伸一JFEホールディングス副社長)として参画を決めた。
台プラの計画は1期工事で投資額105億ドル(約1兆3000億円)、粗鋼生産能力は年700万トン。台湾の中国鋼鉄(高雄市)も25%出資する。
国内外の鉄鋼需要が低迷する中、JFEスチールが2017年度に粗鋼生産量4000万トンを目指す3カ年中期経営計画をスタートさせた。同時に長期ビジョンも設け、25年に同5000万トンという野心的な目標も掲げた。決して楽観視できないこの先、高い目標までの道筋をどう描いているのか。親会社であるJFEホールディングスの林田英治社長に聞いた。
―14年度で3200万トンだった粗鋼生産量を10年で6割近くも引き上げる計画ですね。
「例えば、インドなら出資先のJSWスチールはまだ規模が拡大する。結果、我々の持ち分も増える。自動車用鋼板の生産では中国やタイに加え、北米・メキシコも入ってくる。エネルギー分野ではアブダビで案件を獲得しており、これらを積み重ねていく」
―M&A(合併・買収)も必要では。
「当然考える。それなりの投資は必要だが、他社との提携も含め、10年で十分やっていける。核は技術・品質・サービス。提携先に我々のノウハウを提供し、それを顧客に認めて頂き、評価を得ていく」
―国内も東京五輪開催を控え、需要増が期待できるのでは。
「直接の需要は大きくないが、五輪を機に国土強靱(きょうじん)化やインフラの再整備などが進み、需要は底堅いだろう。しかし、バブル景気のような時代はもはやあり得ず、国内に成長は求められない」
―足元では在庫調整が進まず、減産が長引いています。
「8月までは厳しい。自動車や造船は下半期以降、回復を見込めるが、土木・建築が鈍い。ゼネコンが人手不足もあって受注を選別している。都心の建築物件も計画が先送りになっている」
―人手不足が鋼材需要に上限枠をはめているかのようです。
「ただ、悪い話ばかりではない。一時は五輪前の19年まで建設ラッシュが続き、五輪が終わる20年以降は、需要がぱたっと減ると予測する人もいたが、そうはならない。人手不足でピークが立たない分、息の長い受注が見込める。同じ現象は、造船でも起こっている」
【記者の目/有力なパートナー選びカギ】
25年までの長期ビジョンのスタートは「海外市況は最悪に近い」(林田社長)という厳しい状況。だが、近く正式決定するベトナムの高炉建設事業参画、北中米での自動車用鋼板生産など、海外での積極策に迷いはない。自信の背景には高級鋼の製造技術など高い技術開発力があるが、それを生かせる有力なパートナー選びも難しい作業となろう。
(聞き手=大橋修)
同社は2014年9月、ベトナムでの製鉄所計画への参画を断念。その後、別の台プラ事業で出資を検討していた。今春、17年度までの中期経営計画を開始。アジアを中心に粗鋼生産量を17年度に4000万トン、25年までに5000万トンまで引き上げる長期目標を掲げた。「今は厳しい局面だが、中長期的な成長戦略に立脚した」(岡田伸一JFEホールディングス副社長)として参画を決めた。
台プラの計画は1期工事で投資額105億ドル(約1兆3000億円)、粗鋼生産能力は年700万トン。台湾の中国鋼鉄(高雄市)も25%出資する。
JFEホールディングス・林田英治社長インタビュー
国内外の鉄鋼需要が低迷する中、JFEスチールが2017年度に粗鋼生産量4000万トンを目指す3カ年中期経営計画をスタートさせた。同時に長期ビジョンも設け、25年に同5000万トンという野心的な目標も掲げた。決して楽観視できないこの先、高い目標までの道筋をどう描いているのか。親会社であるJFEホールディングスの林田英治社長に聞いた。
―14年度で3200万トンだった粗鋼生産量を10年で6割近くも引き上げる計画ですね。
「例えば、インドなら出資先のJSWスチールはまだ規模が拡大する。結果、我々の持ち分も増える。自動車用鋼板の生産では中国やタイに加え、北米・メキシコも入ってくる。エネルギー分野ではアブダビで案件を獲得しており、これらを積み重ねていく」
―M&A(合併・買収)も必要では。
「当然考える。それなりの投資は必要だが、他社との提携も含め、10年で十分やっていける。核は技術・品質・サービス。提携先に我々のノウハウを提供し、それを顧客に認めて頂き、評価を得ていく」
―国内も東京五輪開催を控え、需要増が期待できるのでは。
「直接の需要は大きくないが、五輪を機に国土強靱(きょうじん)化やインフラの再整備などが進み、需要は底堅いだろう。しかし、バブル景気のような時代はもはやあり得ず、国内に成長は求められない」
―足元では在庫調整が進まず、減産が長引いています。
「8月までは厳しい。自動車や造船は下半期以降、回復を見込めるが、土木・建築が鈍い。ゼネコンが人手不足もあって受注を選別している。都心の建築物件も計画が先送りになっている」
―人手不足が鋼材需要に上限枠をはめているかのようです。
「ただ、悪い話ばかりではない。一時は五輪前の19年まで建設ラッシュが続き、五輪が終わる20年以降は、需要がぱたっと減ると予測する人もいたが、そうはならない。人手不足でピークが立たない分、息の長い受注が見込める。同じ現象は、造船でも起こっている」
【記者の目/有力なパートナー選びカギ】
25年までの長期ビジョンのスタートは「海外市況は最悪に近い」(林田社長)という厳しい状況。だが、近く正式決定するベトナムの高炉建設事業参画、北中米での自動車用鋼板生産など、海外での積極策に迷いはない。自信の背景には高級鋼の製造技術など高い技術開発力があるが、それを生かせる有力なパートナー選びも難しい作業となろう。
(聞き手=大橋修)
2015年07月28日/ 31日素材・ヘルスケア・環境面