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野村証券が50-60代の“金融教育”に力を注ぐ理由

投資初心者向けの“学び”から顧客確保につなげる
野村証券が50-60代の“金融教育”に力を注ぐ理由

「人生100年時代」で定年後の備え万全に(「野村金融アカデミー」の講座)

 野村証券は、投資の初心者を対象に、有料で資産運用やライフプランニングなどについて学んでもらう「野村金融アカデミー」を11月から始めた。教育機関に提供してきた講座とは異なり、新たなビジネス「金融教育サービス提供業務」として、金融庁の承認を得た。平均寿命が延び、「人生100年時代」と言われる中で、個人投資家のすそ野をいかに広げられるかがポイントになる。

 野村証券では、これまで小・中学生や大学生など幅広い世代を対象に、金融や経済教育に取り組んできた。ただ、実際、投資家になるのは「定年前後で証券口座を開設し、投資を始める人が多い」(藤井公房経営役)という。

 野村金融アカデミーが主に対象とするのは50―60代と、退職を控えた世代が中心だ。11月から開始し、2019年3月末にかけて都内で合計18回開催する予定。定員は50人、受講料は15万円。11月からの開講に申し込んだ受講者に限り7万5000円としたが、定員を上回る応募があったという。

 1回目の講義では、日本人は現金保有比率が高く、約6割が預貯金から投資に回すことを検討しながら、自信や確信のもてる投資しかしない傾向を紹介。50代では、ほとんどの人が老後に不安を抱いているものの、何も手を打てていない現状にも触れた。

 今後、同アカデミーでは、資産承継のほか、介護、年金といったテーマも扱い、外部講師を招いての講義も行う。最終的には、受講者がライフプランニングや資産運用を自分の手でできるようにしてもらうことで、「貯蓄から投資」の流れを後押ししたい考え。

 対面証券会社は、主力の顧客が70歳以上とされる一方、若年層はインターネット証券に流れがちなため、新たな顧客の確保が課題になっている。

 一方、50―60代は退職金などによって今後の資産運用への関心が高まる世代と言える。アカデミーを通じて、顧客満足を高め、個人投資家の拡大につなげたい考えだ。
(文=浅海宏規)
日刊工業新聞2018年12月11日

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