デジタル時代の工場、求められる“予兆管理”の実現
IoT時代を迎え、現場改善や人材教育の方法が変わり始めた。デジタル情報をもとにPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを実施し、工場や会社全体の改善効果の倍速化を目指す企業や、デジタル技術を活用した新たな人材教育に着手する企業が増えている。設備の一元管理による業務改善をはじめ、安全教育、映像活用による製造オペレータ支援など、新時代の管理技術とそれらの導入事例を紹介する。
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見逃してはいけない「製造現場×デジタル」新潮流
工場にとって最も重要なことは、稼働中の設備を止めないこと。しかし、どんな設備でも長く使ううちに必ず故障する。また、機械などの設備にはそれぞれクセがあり、同じ型番の機械でも故障しやすい部位や故障頻度なども異なる。従来、多くの工場で、こうした機械ごとのクセや故障の予兆をベテラン保全員の能力に頼っていた。だが、ベテランでも常に正しい判断ができるとは限らない。翻ってIoT時代が到来し、工場管理者たちの「予兆管理」の実現を求める声はボルテージを増している。
しかし、物事には順序がある。保全業務とは、予め設備が故障した際に修理するための部品や予備品・消耗品などを購入し、修理が行われるとその保全記録を残すこと。ところが、記録を残すべき備品や保全台帳が手書き、あるいは表計算ソフトで管理され、デジタル情報にはなり得ていない工場がある。さらに手書きや表計算ソフトによる管理は、往々にして工場単位の管理レベルに留まり、複数の工場があっても、部品の融通や在庫情報の共有化が図れず、過剰在庫を抱えることになりがちだ。
IoT時代の設備管理や保全管理の基本は、デジタル化に基づく正確な設備台帳や保全台帳を整備、運用することであり、それに関わる情報を一元管理し知識や情報、ノウハウを共有することである。設備台帳を整備し、設備保全のルールが統一化されれば、定期点検などの保全業務がしやすくなる。また突発作業や故障履歴を蓄積し、それらの分析・評価を行えば、予兆管理などの「最終ゴール」も見えてくる。また、機械や部品、予備品などの台帳が一元管理されれば、全社の在庫が見える化でき、過剰在庫の解消や棚卸し作業のスピードアップにもつなげることができる。
一般にEAM(Enterprise Asset Management:企業全体での資産・設備管理手法)と呼ばれるソリューションがさまざまなメーカーから販売されている。その一つがが日立産業制御ソリューションズの「SmartFAM(Smart Facility and Asset Management:スマートファム)」。自動車、化学、金属、食品、医薬、公共など各分野の設備管理をはじめ、事業継続計画や予備品管理、機械や部品の管理など多彩な用途で約300サイトの導入実績を持つ設備・資産管理ソリューションだ。
スマートファムの一番の特徴は「台帳としての基本機能をしっかりと持ちながら、フレキシブルな運用が行えること」と日立産業制御ソリューションズ営業統括本部の田村恵美氏は話す。ソリューションを使っていると、マスタを追加したり、訂正・削除が必要なときがある。市販のソリューションの中には、こうした追加や削除がユーザー側ではできず、発売元に依頼してもけっこうな料金を請求されるケースがあるが、スマートファムは、マスタや画面変更程度のものなら、ユーザー側で簡単に行える。
スマートファムは予備品管理の効率化に使用されるケースも多い。蓄積された設備管理情報を利用して、予備品の余剰を減らし、購入費用を低減させる。その際、RFIDを使って予備品を管理すれば、入出庫や棚卸し時間を劇的に短縮することが可能だ。
さらに在庫の情報の一元管理により「どこに」「何が」「いくつ」あるかの「見える化」が可能になり、工場内での在庫の適正化から全社レベルでの在庫の適正化へとステップアップできる。
一方、日立産業制御ソリューションズはスマートファムの販売ビジネスを変更した。これまでスマートファムの販売は売り切りが中心だったが、今後は保全管理、予備品管理、資産管理などの各ユースケースを商材としたビジネスに軸足を移す。「ユースケースの中から、お客様の課題解決に最も近いものを選んでもらうほうがお客様にとってもわかりやすいし、スモールスタートを切りやすいと考えたのです」(田村氏)。
一例を挙げると、「設備台帳を基本に、工場内の見える化」からスタート。ある工場でプロトタイプが出来上がったら、それを他の工場に広げて一元管理し、生産性向上や保全コストの削減を実現する。さらに顧客企業では設備保全のPDCAを実施しつつ、それまでの事後保全から予兆保全へと目標を高め、それを実現していく。その間、日立産業制御ソリューションズは、顧客企業をサポートし続ける。同社ではこれをリカーリング事業(継続的な利益を生み出すビジネス)として位置付け、今後、全社を挙げて強化する方針だ。
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見逃してはいけない「製造現場×デジタル」新潮流
基本は設備台帳のデジタル化
工場にとって最も重要なことは、稼働中の設備を止めないこと。しかし、どんな設備でも長く使ううちに必ず故障する。また、機械などの設備にはそれぞれクセがあり、同じ型番の機械でも故障しやすい部位や故障頻度なども異なる。従来、多くの工場で、こうした機械ごとのクセや故障の予兆をベテラン保全員の能力に頼っていた。だが、ベテランでも常に正しい判断ができるとは限らない。翻ってIoT時代が到来し、工場管理者たちの「予兆管理」の実現を求める声はボルテージを増している。
しかし、物事には順序がある。保全業務とは、予め設備が故障した際に修理するための部品や予備品・消耗品などを購入し、修理が行われるとその保全記録を残すこと。ところが、記録を残すべき備品や保全台帳が手書き、あるいは表計算ソフトで管理され、デジタル情報にはなり得ていない工場がある。さらに手書きや表計算ソフトによる管理は、往々にして工場単位の管理レベルに留まり、複数の工場があっても、部品の融通や在庫情報の共有化が図れず、過剰在庫を抱えることになりがちだ。
IoT時代の設備管理や保全管理の基本は、デジタル化に基づく正確な設備台帳や保全台帳を整備、運用することであり、それに関わる情報を一元管理し知識や情報、ノウハウを共有することである。設備台帳を整備し、設備保全のルールが統一化されれば、定期点検などの保全業務がしやすくなる。また突発作業や故障履歴を蓄積し、それらの分析・評価を行えば、予兆管理などの「最終ゴール」も見えてくる。また、機械や部品、予備品などの台帳が一元管理されれば、全社の在庫が見える化でき、過剰在庫の解消や棚卸し作業のスピードアップにもつなげることができる。
設備・資産管理ソリューション
一般にEAM(Enterprise Asset Management:企業全体での資産・設備管理手法)と呼ばれるソリューションがさまざまなメーカーから販売されている。その一つがが日立産業制御ソリューションズの「SmartFAM(Smart Facility and Asset Management:スマートファム)」。自動車、化学、金属、食品、医薬、公共など各分野の設備管理をはじめ、事業継続計画や予備品管理、機械や部品の管理など多彩な用途で約300サイトの導入実績を持つ設備・資産管理ソリューションだ。
スマートファムの一番の特徴は「台帳としての基本機能をしっかりと持ちながら、フレキシブルな運用が行えること」と日立産業制御ソリューションズ営業統括本部の田村恵美氏は話す。ソリューションを使っていると、マスタを追加したり、訂正・削除が必要なときがある。市販のソリューションの中には、こうした追加や削除がユーザー側ではできず、発売元に依頼してもけっこうな料金を請求されるケースがあるが、スマートファムは、マスタや画面変更程度のものなら、ユーザー側で簡単に行える。
予備品管理や棚卸しを効率化
スマートファムは予備品管理の効率化に使用されるケースも多い。蓄積された設備管理情報を利用して、予備品の余剰を減らし、購入費用を低減させる。その際、RFIDを使って予備品を管理すれば、入出庫や棚卸し時間を劇的に短縮することが可能だ。
さらに在庫の情報の一元管理により「どこに」「何が」「いくつ」あるかの「見える化」が可能になり、工場内での在庫の適正化から全社レベルでの在庫の適正化へとステップアップできる。
一方、日立産業制御ソリューションズはスマートファムの販売ビジネスを変更した。これまでスマートファムの販売は売り切りが中心だったが、今後は保全管理、予備品管理、資産管理などの各ユースケースを商材としたビジネスに軸足を移す。「ユースケースの中から、お客様の課題解決に最も近いものを選んでもらうほうがお客様にとってもわかりやすいし、スモールスタートを切りやすいと考えたのです」(田村氏)。
一例を挙げると、「設備台帳を基本に、工場内の見える化」からスタート。ある工場でプロトタイプが出来上がったら、それを他の工場に広げて一元管理し、生産性向上や保全コストの削減を実現する。さらに顧客企業では設備保全のPDCAを実施しつつ、それまでの事後保全から予兆保全へと目標を高め、それを実現していく。その間、日立産業制御ソリューションズは、顧客企業をサポートし続ける。同社ではこれをリカーリング事業(継続的な利益を生み出すビジネス)として位置付け、今後、全社を挙げて強化する方針だ。
工場管理2018年11月号