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母はやっぱり強かった!ダイキン流「国内マザー工場」の作り方

滋賀製作所のモノづくりと人づくり
母はやっぱり強かった!ダイキン流「国内マザー工場」の作り方

滋賀製作所

 今年、8年ぶりに生産台数が100万台を超えるダイキン工業の滋賀製作所。中国がモノづくりを主導していたのはもはや昔話。国内回帰に成功したマザー工場の強さに迫る。

 1970年に設立された滋賀製作所(滋賀県草津市)は、家庭用ルームエアコン「うるさら7」などを製造する主力工場の一つ。2008年に提携した中国・珠海格力電器(広東省珠海市)に国内向けのボリュームゾーン(普及価格帯)機種を生産委託したことで、生産量が大きく減少した。

 「このままでは国内で家庭用エアコンの生産がなくなってしまう」―。低コストで大量生産する格力のパワーを目の当たりにした従業員は危機感を募らせた。「滋賀製作所でしかつくれない差別化商品を開発するしかない」と腹をくくり、新製品の開発に挑戦する。そして12年11月、「うるさら7」の発売にごきつけた。

 製品の特徴は、業界に先駆け新冷媒の「ハイドロフルオロカーボン(HFC)32」を採用したこと。従来の冷媒「HFC410A」に比べてエネルギー効率が高く、温暖化係数は約3分の1と環境負荷が低い。その反面、扱いが難しいとされていた。通常であれば、最上位機種のみに採用して様子を見るところだが、「本当に良いものなら全機種でやろう」という社内の声が高まり、「うるさら7」を皮切りに国内家庭用エアコンの新機種すべてに採用することを決断する。

 開発に際しては、専任メンバーを抜てき。さらに生産、調達、販売など多くの社員を巻き込みながら地道に進めていった。これも、部門間の垣根が低い社風だったからこそ実現できた。もう一つ、大きなポイントになったのが開発の初期段階からサプライヤーと協業したことだ。

 自社技術に自信はあったが、社内に閉じたままでは今までと変わらず、中国に太刀打ちできない。実用化に向け技術課題を出し合いながら議論を重ねていった。例えば、プラスチック材料に空洞を作る「中空成形」技術をエアコンの羽根に初めて採用したが、コスト競争力のある高効率な量産ラインを可能にしたのも、サプライヤーを巻き込んだ取り組みの成果である。

 滋賀製作所空調生産本部小型RA商品グループリーダーの小泉淳主任技師は、「日本にマザー機能を残す一つの方法論を示すことができた」と話す。エアコンに限らず組立産業で利益を出すには、徹底的なコスト管理に加え、日本の独自技術を製品に落とし込むことが不可欠。そしてマザー工場の役割は、「そのノウハウを世界各地の工場に移行する仕組み作り」(小泉技師)にある。

 今振り返ると、中国への生産委託はダイキンにとって良い意味で大きな転機になった。国内生産が減少した時も、設計の共通化(ベースモデル機の開発)、生産のリードタイム短縮や設備の効率化・自動化など、コストダウンの取り組みを怠ることなく継続。「うるさら7」開発の裏側で、モノづくり力を磨き続けたことが、国内回帰をスムーズにさせた。

 家庭用エアコンは猛暑などの天候次第で需要が急激に変わる。ダイキンはもともと、これに対応するために市場に最も近い工場で生産することにしており、コスト面で断念していたボリュームゾーンの機種も国内で生産を再開した。今年、滋賀製作所では2008年以来7年ぶりとなる100万台を超える生産を計画している。円安局面にあるとはいえ、中国にもコストで負けないということが、「数字」に表れた。

 では、引き続きマザー機能を日本に残していくために、将来を担う人材をどのように育てていくか。製造業ならどこの企業でも最も気になる点だ。「今までと同じやり方をしていては、同じような人材しか育たない」と小泉技師。優位性を保つためには、技術はもちろん、開発スピードも上げなければならない。

 そのためにはデータベースを基にしたシミュレーション開発への移行なども重要になる。「基盤技術の評価にも若手を参加させた。抜本的な開発フローの改革が、これまでにない人材を生む」(同)。モノづくりは人づくり―。当たり前のことを、愚直にやり遂げたことで、滋賀製作所は“偉大なる母”に生まれ変わった。



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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ダイキンは米子会社のグッドマンがヒューストン郊外に新工場を建設中で、2020年をめどに生産能力を5割増やし北米市場でトップシェアを狙っている。北米市場はダクト式空調が主流だが、最近は日本で主流のダクトレスの人気が高まっている。ダイキンはモノづくりの力に裏打ちされた、エアコン文化も世界に発信してもらいたい。

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