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1兆円企業へ執念のミネベアミツミ、社長公募2度のユーシンを傘下に

「どんなことがあっても1兆円を達成」
1兆円企業へ執念のミネベアミツミ、社長公募2度のユーシンを傘下に

会見終了後握手する貝沼由久ミネベアミツミ会長兼社長(右)と岡部哉慧ユーシン社長

 ミネベアミツミが売上高1兆円企業に仲間入りする。ミネベアミツミは7日、ユーシンと経営統合すると発表した。ミネベアミツミが2018年3月期売上高8791億円、ユーシンが17年12月期同1686億円(決算期変更で13カ月決算)で、単純合算の連結売上高で1兆円を超える。今回の統合は業績不振のユーシンに対する救済とも言える。だが、ミネベアミツミが自動車分野でティア1(1次下請け)の位置を確保し、さらなる上を目指す布石にも受け取れる。

 「来期(20年3月期)はどんなことがあっても1兆円を達成するという強い決意でここまで来た」。ミネベアミツミの貝沼由久会長兼社長は7日の会見でこう主張した。21年3月期までの中期事業計画中にさらにM&A(合併・買収)を進め、業容拡大を図る。

 ミネベアミツミは19年1月下旬にTOB(株式公開買い付け)を開始し、ユーシンを完全子会社化する。1株当たり985円を予定し、全株取得を目指す。

 買収総額は約326億円。目下、取り組むべきは営業損益で赤字が続くユーシンの欧州事業の経営改善で、今後、貝沼会長兼社長の腕の見せ所となる。

 経営統合に際し貝沼会長兼社長が最も強調した点は「自動車メーカーのプレゼンス(存在感)の拡大」だ。

 ユーシンはキーセットなど自動車電装品を国内外の自動車メーカーに供給するティア1メーカー。長年培った国内外の自動車メーカーとの強固な取引関係があり、国内外に30社を超えるOEM(相手先ブランド)の顧客を持つ。

 自動車メーカーに直接納入することはかなりの実績が必要だ。製品によって異なるが、ティア2の位置にあるミネベアミツミがティア1の位置を手に入れることで、直接、自動車メーカーから新たな情報を入手し、顧客要求に合致した新製品の開発と提案が可能になる。貝沼会長兼社長は「当社の車載事業は(18年3月期の売上高が)約1300億円。ユーシンの約1500億円が乗ると2800億円。さらに伸びて3000億円を優に超えるだろう」と期待する。

 とはいえ、油断は禁物だ。ユーシンは13年、欧州での顧客基盤の拡大と海外売上高比率の向上を理由に、仏ヴァレオからキーセットやドアハンドルなどのアクセスメカニズム(UAM)事業を買収した。だが、製品不具合が発生するなど、欧州事業が当初期待していた成果を上げられていない。財務基盤の安定化支援や生産性の改善などが早急に必要だ。

 ミネベアミツミは17年のミツミ電機との経営統合で、ミツミの営業損益の赤字をV字回復させた経験がある。貝沼会長兼社長は「今回は当社のチャレンジになる。必ず欧州をターンアラウンド(経営改革)させる」と立て直しを誓うが、「ミツミの時と同じようにしたいが欧州は初めての経験」と慎重に取り組む姿勢も見せる。ユーシンの買収が、吉と出るか凶と出るか、目が離せない。

(文=山谷逸平)
日刊工業新聞2018年11月26日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
電子部品メーカーにとって売上高1兆円は大きな節目。国内では京セラと村田製作所、日本電産、TDKが1兆円を超える。ミネベア出身の貝沼会長兼社長は、ミツミ電機との経営統合成立から2年弱で次の買収を決めた。1兆円への強い執念を感じる。 一方のユーシンは創業家出身で前会長兼社長の田辺耕二氏が事業買収による拡大策を取ってきたが、最後に仏ヴァレオの事業買収が裏目に出て業績が悪化。下請法違反も見つかり、17年に田辺氏が退任した。田辺氏は異例の社長公募も2度も行ったことでも注目を集めた。復活に期待したい。

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