VR映像で“見えない”恐怖体験?!VRの世界広げる学生たち

VR元年から3年目、普及の起爆剤に

 学生が若い感性で多彩な仮想現実(VR)作品を制作―。11月中旬に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された第26回国際学生対抗VRコンテスト(IVRC)で、自ら魚釣りのルアーとなって大物を釣り上げるゲームなど15作品を学生らが披露した。VRの普及はまだこれからであり、起爆剤となるようなコンテンツの登場が期待される。

「魚に食べられてみたい」


 東北大学電気通信研究所の学生らは、釣り餌となって、魚を釣り上げるコンテンツを展示した。海中の浮遊感を表現するため、ハンモック2台を使ったのがユニークな点だ。体験者は頭部にヘッドマウントディスプレー(HMD)とヘッドホン、足首に釣り糸を装着する。大きな魚を見つけたら、大きく揺れて自分をアピール。食いつかれたら、さらに激しく揺れて魚を消耗させて釣り上げる。

 コンテンツ開発は、『魚に食べられてみたい』というアイデアから始まった。浮遊感の表現方法を探してハンモックに行き着いた。今後、同コンテンツの活用は未定で、大学院生の大西悠貴さんは、「海の中の行動を体験する手法の研究につなげたい」と話す。

東北大の作品。体をゆらし、魚に自分を食べるようアピールする

CO中毒時の視界は…


 同コンテストには高校生も参加。立教池袋高校数理研究部は、火災時の一酸化炭素(CO)中毒の恐怖を体験するコンテンツを披露した。火災現場を逃げる状態をVRで体験するもので、呼吸した量が増えるとCO中毒が進んで視界がぼやけ、歩いたつもりでも進まなくなる。高校生らは「目に見えない恐怖を知ってほしい」と開発の狙いを語る。

 没入感を高めるため、「呼吸感知マスク」と「歩行感知デバイス」を作製した。歩行感知デバイスは、周囲を柵でぐるりと囲み、足元は中央の凹んだすり鉢状。滑りやすい畳の下に磁力センサーを仕込み、磁石付きのスリッパで歩くと歩行を感知するという仕組みだ。外側へ歩いても、中央方向に滑り落ちて元の位置に戻るため歩き続けられる。

 今後、歩行感知デバイスを複数台使い、対戦ゲームなども考えていきたいという。

 このほかに、頭の中で植物の種が成長する奇妙な体験を提供する明治大学の「ブレインツリー」や、出血した感覚を体験する東京工業大学のコンテンツなどが展示された。

 一般向けVRヘッドセットが相次いで発売され、「VR元年」と言われた2016年から3年目となる。VRの認知は広がったが、個人向け端末の普及はこれからだ。VRを使いたくなるアイデアの続出が期待される。

IVRCには多彩な作品が並んだ

日刊工業新聞 2018年11月21日

梶原 洵子

梶原 洵子
11月25日
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 立教池袋高校のVR作品、私は逃げ切れませんでした。非常口の方向を示す一般的な非常灯が作品内にもあるのですが、矢印がどちらの方向を向いているかぼやけてわからなくないんです。不具合かなと思い、体験後に聞いたところ、CO中毒の症状の一つとのこと。医学知識を持つ人のアドバイスを受けて呼吸量によって視界や歩行の進み具合を調整しているそうです。どう逃げたらいいかわからず、余計に焦りました。
 ホテルなどに炎を感知すると壁紙に逃げる方向が大きく浮かび上がるとか、床の微妙な凹凸で逃げる方向がわかるとか、非常灯よりもわかりやすい避難指示があるといいなと思いました。建築家やデザイナーの人が体験すると色んなアイデアが浮かびそうです。
 VR作品も、その活用手段も多様化することが期待されます。

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