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【COP14の論点】経団連の生物多様性宣言、経営者に積極性求める

経団連自然保護協議会の二宮雅也会長(損保ジャパン日本興亜会長)
 経団連は10月、生物多様性宣言を改定した。多くの経営者が賛同する「持続可能な開発目標(SDGs)」をふまえた内容とし、企業活動に生物多様性を組み込む「主流化」を後押しする。改定を推進した経団連自然保護協議会の二宮雅也会長(損保ジャパン日本興亜会長)は「経営者が重要性を繰り返し語るべきだ」と話す。二宮会長に改定の狙いや産業界への期待を聞いた。

 ―生物多様性宣言を改定した狙いは。
 「宣言は2009年に制定した。その後、10年に世界目標の『愛知目標』、15年にSDGsとパリ協定ができ、世界が大きく変化した。SDGsの文脈だと生物多様性を理解しやすい。SDGsには生態系に関連する目標が多く、企業の取り組みの後押しとなる」

 ―新しい宣言で強調したい点は。
 「第一条だ。『経営者の責務』『自然の営みと事業活動とが調和した経営を志す』と経営層の役割を規定した。経営者は確信を持ち、繰り返し熱意を持って生物多様性を語るべきだ。自ら動けば従業員に浸透し、ステークホルダー(利害関係者)にも伝わる」

 ―生物多様性は専門性が高く、環境・CSR部門が担当することが多いです。
 「経営者がストーリーとして語らないと、社内外から共感を呼べない。持続可能性への課題として捉えないと進まない。ESG(環境・社会・企業統治)投資も同じだ」

 ―愛知目標の進捗(しんちょく)は。
 「企業において着実に進んでいる。経団連が宣言を出した09年以前と比べ、かなり広がった。SDGsも追い風だ。企業が生物多様性に取り組む経団連の手引書も随時、見直す。会員外にも活用してもらい、すそ野を広げて主流化を推進したい」

 ―産業界への期待は。
 「経団連会員から事例を集めている。各社は事例を見て一緒に取り組めるパートナーを見つけてほしい。1社で最上のモノを生み出すよりも、オープンイノベーションが当たり前となった。事例は英語にもする。連携で新しい価値をつくってほしい」
                  
日刊工業新聞2018年11月16日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
二宮会長は生物多様性条約第14回締約国会議(COP14)の開催地のエジプトを訪ね、日本の産業界の取り組みを発表した。日本企業の存在感を示す機会となったはずだ。COP10が名古屋市で開かれた10年は、企業独自の発信も多かった。次回のCOP15は20年、中国で開かれる。現地企業に負けない発信が日本企業に求められる。

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