日立、初の海外売上高5割超え(4-6月)グローバルメジャーに近づいているか?

2年前、海外へのトップセールス宣言をした中西社長(現会長兼CEO)

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2013年5月中計を発表する中西社長(当時)
 日立製作所は今年(2015年度)が最終年度の中期経営計画で悲願である海外売上高比率50%を掲げている。まず、第1四半期(4―6月期)はその達成に向けて第一歩を踏み出した。日立が「グローバル最優先」を強調し始めたのは中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)が社長になった2010年から。2年前、中計を発表した直後に日刊工業新聞では中西社長(当時)にインタビュー。そこで語られた思いはどこまで実現できているか。

「海外で成長している産業、企業に入り込めていない」


2013年5月23日付


  日立製作所の中西宏明社長は22日、日刊工業新聞社の取材に対し、社会イノベーション事業でこれまでほとんど取引実績のない海外の成長企業を約60社選定し、重点的にトップセールスを進める考えを明らかにした。同社は先週、新しい中期経営計画(13―15年度)を発表。15年度に海外売上高比率50%超(12年度実績41%)を目指している。海外戦略など今後の事業展開について中西社長に聞いた。

 ―過去3年間は社会イノベーションに事業を集中させてきましたが、明確になった課題もあると思います。
 「特に海外で顧客基盤が弱い。過去20年間、日立の大口顧客の顔ぶれは変わっておらず、成長している産業、企業に入り込めていない。専門部隊を作って国営石油会社のサウジアラムコ(サウジアラビア)など約60社リストアップし、トップ同士の会談を始めた。日本企業はあえて入れていない。細かい製品の売り込みではなく、『あなたの会社にイノベーションを提案したい』と持ちかけている。いくつかビジネスの芽が出てきている」
 
 ―三菱重工業と統合する火力の売り上げが約5000億円無くなります。中計の売上高10兆円(12年度実績9兆410億円)は予想以上に高いハードルでは。
 「3年間で1兆5000億円を積み上げることになるが、実は各事業部門から出てきた数字はもっと大きかった。その前提には稼働率が上がって収益が改善するという発想がある。センスを疑う。私を含め本社部門が売り上げを低く抑えた。新規開拓を含めいろいろ手を打つので10兆円ぐらいは届く感覚がある」
 
 ―火力が抜ける電力システム部門は、送変電設備事業などでカバーすることになりますか。
 「(昨年に共同出資会社を解消し)失地回復しないといけない。投資もせず赤字を出さない経営が約10年続き、事業は疲弊している。米国工場も増強するが製品開発ともからむので、中長期の視点で戦略を考える」
 
 ―前の中計では社会イノベーション事業への設備・戦略投資に1兆円をかけました。今回は投資の数値目標を明示していません。
 「前回は財務体質が悪く『日立は投資しない』と思われても困るので出した。今回はあえて示す必要もない。(1兆円の投資のうち)M&A(合併・買収)は20%ぐらいだった。M&Aは相手とタイミングが重要で、投資枠を決めているわけではない」
 
 ―来週、キャメロン英首相と会談する予定だそうですが。
 「鉄道車両や原子力事業以外にも英国では三、四つプロジェクトが走っている。組織が大きくなるので日立の事業展開を説明し、政府にコミットをお願いする」
 
 【記者の目/“ポスト中西”最大のリスク】
 毎月1回のペースで海外に出向く。日本政府を含め対外的な仕事が多くなった。後継者が育って、いつでも引き継げますか?と聞くと「そうじゃないですか(笑)」という答え。中西社長へズバズバ進言できる幹部は社内にそういない。昨年から外国人の社外取締役が加わった意義は大きい。日立の最大のリスクは、“ポスト中西”だろう。
 (聞き手=明豊)

4―6月期は海外鉄道好調で営業益最高


 日立製作所が29日に発表した2015年4―6月期連結決算(国際会計基準)は、営業利益が前年同期比2・7%増の1153億円となった。第1四半期としては過去最高。昇降機や鉄道システムが海外で好調だった。また為替の円安進行で100億円、原価低減活動で440億円の増益効果を得た。
 
 日立は産業・インフラ設備にITを組み合わせて競争力を高め、海外を中心に受注が伸長。同日会見した中村豊明副社長は「(営業利益は9部門中)7部門で前年同期を上回った。海外売上高比率も初めて5割を超えた」と評価した。営業利益面では、社会・産業システム部門の英国向け鉄道システムが貢献した。昇降機も受注残高を抱え、好調だった。ただ「足元では中国の受注が落ちている」(中村副社長)という。

 高機能材料部門は買収した鉄鋳物事業会社の効果に加え、自動車・電機向け製品が伸びた。一方、建設機械部門は中国などアジア・オセアニア市場が低迷。家電など生活・エコシステム部門は円安で調達費が増加し、利益を押し下げた。16年3月期業績予想は前回予想から据え置いた。「中国や資源国、産油国の成長が鈍化している」(同)と保守的に判断した。

日刊工業新聞2015年07月30日1面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

海外のトップセールスは少しずつ実績が出始めている。2年前に比べ新興国から、市場が安定している北米にやや軸足を置いた。正しい選択だろう。中西氏は海外における前線の営業力が常々弱いと言ってきた。4月からは日立本体の執行役常務に米IT子会社、日立データシステムズのCEOであるジャック・ドメ氏と、交通システム事業グローバルCEOのアリステア・ドーマー氏を抜てき、ドメ氏は米州総代表を兼務するなど幹部人材でも体制を築きつつある。昨年、社長に東原敏昭氏を引き上げたが、本人は引き続きCEOとして日立の海外展開をけん引、投資家や顧客のマネジメント層からみても依然「日立の顔」である。2年前のインタビューに記した、最大のリスクは“ポスト中西”というのは、今も変わっていない。

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