EV大国中国に挑む、新車販売7割増への日産自の戦略とは?

ホセ・ムニョス日産グローバル・チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)

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シルフィ ゼロ・エミッション
 2022年に中国での自動車販売を17年比7割増の260万台に引き上げる目標を掲げる日産自動車。けん引役は電気自動車(EV)などの電動車だ。9月に同国で日産ブランド初のEVを投入。さらに19年末までにEV4車種を発売し市場をリードする。中国政府の電動車の普及政策は量の拡大から、品質や性能重視に転換しつつある。ブランド力や、自動車としての魅力を高められるか―。日産に限らず、日系メーカー共通の課題となる。

 「大きな賭けではあるが、中国でのリーダーシップを証明する。この車で成功を果たす」―。14日までに、日刊工業新聞などとのインタビューに応じたホセ・ムニョス日産グローバル・チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)は強調した。

 この車とは、9月に中国で発売したEV「シルフィ ゼロ・エミッション」。日産の中国での最量販車種「シルフィ」に、EV「リーフ」のシステムを応用。「二つの車のベストを採用した」(ムニョスCPO)という自信作だ。

 日産は22年までに電動車を20車種投入し、同年に全販売台数に占める割合を3割に高める計画。電動車とはEVと、エンジンで発電しモーターで駆動する独自の「eパワー」車を指す。先陣を切ったシルフィ ゼロ・エミへの期待は大きい。

 中国は政府主導で、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)を指す「新エネルギー車(NEV)」の普及拡大を進める。補助金やナンバープレート発行優遇を追い風に、17年の販売台数は前年比1・5倍の約80万台に達した。政府は20年に200万台の販売目標を掲げる。

 注目されるのは中国政府がNEV普及政策を転換していることだ。18年の補助金要件を17年と比べると、航続距離の短いモデルの補助金が減額された。日本政策投資銀行の高柿松之介副調査役は「拡販支援のアメから、品質向上を見据えたムチにシフトした」と説明する。

 政策転換が市場に与える影響は大きく、17年にEV販売シェア首位の北京汽車「ECシリーズ」は18年に入り販売が低迷した。航続距離が150キロメートル程度(1回充電当たり)と短く、補助金が縮小したためとみられる。

 ムニョスCPOは「今後は製品の魅力が重要な差別化要素になってくる」と指摘する。シルフィ ゼロ・エミの航続距離は338キロメートル(同)と長く、遠出でも使えるようにした。政投銀の高柿副調査役は「補助金に左右されてきた市場が健全化に向かう」とみる。品質や性能を売りにしてきた日本車には追い風だ。

 ただ中国ブランド車の品質は急速に改善している。調査会社JDパワー中国によると中国ブランド車の不具合件数は、07年は世界ブランドと比べ8割超多かったが、17年には1割超まで縮小した。

 優位性を保つには品質や性能にプラスαが必要になる。ムニョスCPOは「日産の電動車は、素晴らしいトルク性能や、運転して楽しい点が強み」と強調し、ブランド力向上に重きを置く。ホンダは18年内に、トヨタ自動車は20年に自社開発EVを投入する計画で日系メーカーの電動車投入が相次ぐ。先陣を切った日産が存在感を高められるかどうかは、今後の日系メーカーの中国での電動車戦略の行方を占う。

(文=後藤信之)

   

日刊工業新聞 2018年11月15日

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