「ユニキャリア売却の波紋」三菱重工が買収!世界シェア3位に

ニチユとの統合見送り。重工、首位・豊田自動織機への挑戦権を得る

  • 0
  • 0
左は三菱重工の宮永社長
 三菱重工業とニチユ三菱フォークリフトは、産業革新機構、日立建機、日産自動車からユニキャリアホールディングス(HD、東京都品川区)の全株式を取得することで合意した。三菱重工が株式の過半数を握り、ニチユ三菱が残りを取得する方向。買収総額は1000億円を超える見込み。週内にも発表する。三菱重工はフォークリフト大手のニチユ三菱、ユニキャリアHDを別会社として存続させ、当面の経営統合を見送る方針。シナジーを早期に最大化する難しさは残りそうだ。

 三菱重工の「機械・設備システムドメイン」傘下にフォークリフト専業2社がぶら下がる格好となる。各社の主力ブランドを存続し、研究開発や生産、デザインなど案件ごとに連携を模索する見通し。

 筆頭株主が三菱重工とはいえ、別企業として運営するため、競合する部分は残る。このため、相互の情報開示には一定の制約が出そうだ。当面、販売台数の少ない大型車種の相互融通や中国などアジア市場で連携を模索する案が有力だ。フォークリフト業界でニチユ三菱は世界シェア6位、ユニキャリアHDは同7位で、単純合算で同3位に浮上する。今後、規模のメリットを最大化するには統一車種の開発や間接業務の統合などが必要になりそうだ。

 ユニキャリアHDは日立建機と日産自動車のフォークリフト事業が母体。産業革新機構が株式の53・3%を握り、出口戦略を模索してきた。世界シェア2位の独キオングループが買収に名乗りを上げていたが、金額などの諸条件条で上回ったニチユ三菱が優先交渉権を獲得した。

日刊工業新聞2015年07月29日1面


ユニキャリア売却の波紋!深層レポート


 ニチユ三菱フォークリフトがフォークリフト大手ユニキャリアホールディングス(HD、東京都品川区)を買収する方針であることが29日わかった。買収金額は1000億円を超えるとみられる。ユニキャリアHDの株式約53%を保有する政府系ファンドの産業革新機構は、ニチユ三菱と世界シェア2位の独キオングループのどちらに売却するか検討していた。ニチユ三菱は買収で世界シェアが6位から3位に高まる。世界シェア1位の豊田自動織機を追い上げる狙いだが、買収効果をいかに発揮するか課題もある。

 <世界3位へ。「日本勢で決着」も新興国開拓で道半ば>

 フォークリフト業界の目玉となっていた大型再編が、国内勢同士の統合で決着が付く。元をたどれば国内4社に行き着く混成企業が誕生する。ニチユ三菱は2013年4月、三菱重工業のフォークリフト事業とニチユが統合して発足した。ユニキャリアHDは日立建機と日産自動車のフォークリフト事業が母体で13年4月に統合を完了した。日立建機と日産は現在も株式を保有する。
 
 買収に名乗りを上げた2社のうち、キオンの方がシナジーが高いとみられていた。キオンは売上高の約8割を欧州で占める。買収で日本市場に参入できる上、ユニキャリアHDが北米を得意とするなど、地域の補完性が高かった。ニチユ三菱の場合、欧州での補完効果が期待できる。ユニキャリアHDはスペイン工場の生産能力に余力があり、ニチユ三菱の車両を生産すれば、工場の操業度を高められる。

 ただ、2社が統合し、成長する新興国市場をどう開拓するかが不透明だ。両社の得意地域は北米で重なる。ニチユ三菱は15年3月期売上高の4割が米州で、アジア・中国は13%にとどまる。ユニキャリアHDは中国の新興フォークリフトメーカーを買収し、需要の高い低価格車の拡販に乗り出した段階。こうした両社の取り組みを連携させ、市場をいかに深耕できるかが問われる。
 
 シナジーを期待しやすいのが、研究開発体制の強化だ。豊田織機は燃料電池(FC)式フォークリフトの実証実験を15年2月に実施するなど、将来技術への投資で先を行く。統合による規模拡大で、研究開発を追い上げる投資余力を得られる。2社とも大型再編で発足して数年で次の統合に入る。性急にも思えるが、それだけ急がなければ豊田織機の背中が遠のく危機感がある。短い時間で新体制を軌道に乗せることが求められる。

 <出口戦略では官民関係者の思惑が錯綜>

 政府系ファンドの革新機構が出資するユニキャリアHDの売却先を巡っては、官民関係者の思惑が錯綜していた。その多くは中国資本が入る独キオンへの売却懸念だった。同業他社の経営幹部が「外資に売るんじゃない」と勝手な注文を付けたり、永田町の意向を忖度(そんたく)した一部官僚が”対中アレルギー“を発症して反対したりと外野の声はかまびすしかった。

 一方、欧州連合(EU)がユニキャリアHD売却先の選定で公正な審査を日本側に求めてきたと言われ、騒動は国境を越える事態となっていた。
 
 当の革新機構の出口戦略は一貫していた。より良い条件を提示した企業へ売却するだけで、外国企業を排除しない方針は投資決定した11年に明らかにしていた。革新機構の広報担当者はニチユ三菱への売却報道について「何も申し上げることはない」と肯定も否定もしていない。

 革新機構は30日付で日産自動車副会長の志賀俊之氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する。新体制の下で、優良企業となったユニキャリアHDの売却先を正式に決定することになりそうだ。

日刊工業新聞2015年06月30日深層断面を一部編集

関連する記事はこちら

特集