「こうしたらいい」と言い出したら会社は終わりだ

ちとせCEO・藤田氏

 生物の培養・育成技術を持つ、ちとせバイオエボリューションは、創業から15年でバイオ燃料、健康食品、医療分野へと進出し、11社を束ねる企業群に成長した。本社をシンガポールに置き、マレーシアや中国など6カ国・地域から人材が集まる。バイオベンチャーの成長を支える研究者のマネジメントや育成について、藤田朋宏最高経営責任者(CEO)に聞いた。(編集委員・松木喬)

―社員120人が4カ国・11社に分散しています。しかも、藤田CEOはシンガポールにいます。どのように管理していますか。

「“広がっていく組織”にしたいと考えてやってきた。『これだけは守っておけ』と最小限のルールを示し、そのルール内なら、社員は自由に広げていい。私がいると社員は自立しづらい。だからシンガポールに本社を構え、私が日本を離れた」

―“広がっていく組織”とは。

―「自由に仲間を増やすこと。仲間が増えると自分の研究が事業となり、会社となって独立するとグループとして成長する。個人事業者がみんなで盛り上げる商店街の感覚だ。大企業は明確な部署があり、千葉支店の社員が埼玉県の仕事に手を出せない。ちとせはベンチャーであり、与えられた範囲の仕事にこだわっていられない」

―人材育成は。

「先輩社員には“場”と“視点”と言っている。新入社員にはチャレンジする場を与える。もし、うまくいかなくても先輩は『こうしたら良かった』と助言をしてはいけない。『こういう方法もあった』と視点を増やしてあげることだ。言葉にするとルールになるので、場・視点以外は言語化していない」

―なぜですか。

「何が正解かわからない。今は正しいと信じていても、振り返ると間違いということもある。会社の経営も同じ。『こうしたらいい』と言い出したら会社は終わりだ。硬直化してしまう。だからルールがないと仕事ができない人は採用しない」

―人事評価は。

「人を見て評価しており、指標は示していない。目標があると軌道修正できなくなるからだ。事業環境が変化したのに『本年度の目標はこれだから、年度内はこのままでいく』と、目標にこだわったら手遅れになる」

【ポイント/社内にいない人物採用】

ちとせバイオの中核企業、ちとせ研究所は藻類の増殖技術を保有し、IHIとバイオ燃料事業で提携する。グループ会社のタベルモは、三菱商事と共同でブルネイに食用藻の量産工場を建設する。着々と社外にも仲間を増やしている。

人づくりへのこだわりは、採用にも現れている。他の社員に任せると仲間にしたい人を選ぶため、藤田CEO自身が面接する。「仲間を増やせ」とは矛盾するが、社内にいない人物を選んで組織の硬直化を防ぐ。

日刊工業新聞2018年11月8日

松木 喬

松木 喬
11月09日
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藤田さんは、よしもと興業にも組織をたとえていました。芸人それぞれが芸を磨き、切磋琢磨することでよしもとも成長します。それに似た芸風ばかりでは飽きられます。ただ「規模だけ大きくなっただけ」です。あとルール内での自律について、サッカーでたとえていました。フィールドで自分で判断して動けるプレーヤーか、指示至上主義か、です。

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