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C型肝炎“特効薬”に早くも第二弾。気になる「ハーボニー」の薬価は?

医療財政圧迫の中、ソバルディは1錠6万1799円だったが…
C型肝炎“特効薬”に早くも第二弾。気になる「ハーボニー」の薬価は?

薬価が注目される「ハーボニー」

 国立国際医療研究センターによると、日本にはC型肝炎ウイルス(HCV)感染者が150万―200万人いる。感染が続くと死亡率の高い肝がんを引き起こすため、治療法の進化が望まれていた。ただ画期的な薬は薬価も高くなる傾向があり、医療財政へ影響する可能性も大きい。このほど登場した新薬は福音となり得るのか。

 【経口投与で治療】
 5月、ギリアド・サイエンシズ(東京都千代田区)からC型肝炎薬「ソバルディ」(一般名ソホスブビル)が発売された。薬価算定にあたっては、効き目の高さなどを評価する画期性加算の対象となった。これが適用されたのは約13年ぶりだ。

 同剤は経口投与により12週間で治療でき、臨床試験では96・4%の患者が治癒した。従来療法のインターフェロン(IFN)は24―48週間もの注射が必要で、副作用もみられる。米澤敦子東京肝臓友の会事務局長によるとIFN治療中にうつ病を発症するなどして悩む患者は多く、「新薬に関する問い合わせが殺到している」。

 【[G]さらなる新薬も】
 さらにギリアドは「ハーボニー」(一般名レジパスビル・ソホスブビル配合剤)の承認も取得済みで、今夏にも薬価収載の見通し。ソバルディは日本のC型肝炎患者の20―30%を占める遺伝子タイプ2型が対象だが、ハーボニーは7―8割が罹患(りかん)している1型に効く。臨床試験では患者157人全員のウイルスが消えるという驚異的な結果が出た。

 こうなると注目点は薬価だ。ソバルディは1錠(1日分)6万1799・30円で収載された。肝がん抑制などで長期的な医療費削減につながり得るが、短期の医療財政は圧迫される。当局や有識者の判断が注目されている。

<専門医は語る>国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター 溝上雅史センター長


 HCVは患者の血液をさわったくらいではうつらないが、注射などの医療行為を通して血管に入ると簡単にうつる。漢方医学しかなかった日本へ西洋医学の外科的手法がもたらされた際にHCVも来たと考えられる。1920年代には静注駆虫剤の使用が始まったことでHCVが拡散した。40年代における日本住血吸虫の分布地域と、現代の肝がん死亡率が高い地域は一致している。こうした歴史的経緯からも肝がんは社会全体の問題だ。
 C型肝炎遺伝子タイプ1型(の治療薬であるハーボニーの開発)では信じられない(ほど良好な)試験結果が出た。ただし治験は(服薬管理などを)良い条件でやっている。(実際の治療では薬を)中途半端に飲むのはダメだ。3カ月間は死に物狂いでちゃんと飲んでほしい、と患者さんにはお願いをしている。(談)
 (文=斎藤弘和)
 ※日刊工業新聞では連載「病と闘う」を随時掲載
日刊工業新聞2015年07月28日 ヘルスケア面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
5月に開かれた厚生労働省の肝炎治療戦略会議で、ソバルディが医療助成対象になった。どの程度の患者が治療を受けるかにもよるが、薬剤費で兆単位になる可能性もある。その多くは国民が支払う保険料や助成金で賄う。ハーボニーが販売になると、さらにその額は膨らむ。国の医療費はすでに約40兆円。海外の例も参考にしながら医療行政のあり方を見直す時期にきている。

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