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伊東園・ホテル湯西川(日光市)が「365日同一料金」やめます!

デフレ時代の価格体系を見直し。破産した老舗旅館「伴久ホテル」を改装し人気高く
伊東園・ホテル湯西川(日光市)が「365日同一料金」やめます!

価格設定を多様化したホテル湯西川(栃木県日光市)

 伊東園ホテルズ(東京都豊島区)は、従来の”デフレ時代“にマッチした低価格・同一料金路線を修正し、多様化を模索している。44件目の宿泊施設となる「ホテル湯西川」(栃木県日光市)をオープンした。「365日同一料金」を掲げる伊東園ホテルズの他の宿泊施設に比べて、土曜日やお盆・年末年始といったトップシーズンの料金設定を変えたのが大きな特徴だ。

 伊東園ホテルズは、カラオケ店などを経営するクリアックスが2001年に「伊東園ホテル」を買い取り、従業員向けの保養施設として利用したのが始まり。土日は保養施設として使い、平日に一般客向けに提供したところ好評だったためホテル経営に乗り出した。

 特徴は(1)既存の宿泊施設を安価に買い取る(2)食事はバイキング、仲居は置かずチェックイン時から布団が敷いてある(3)食材を一括で仕入れる(4)旅行代理店を通さない―など徹底したコストダウン策を取り入れている点だ。これにより安価な宿泊料を実現。旅行業界では珍しい「365日同一料金」という宿泊客に分かりやすい独自の料金システムを打ち出し、この十数年で急激に成長してきた。

 一方、新たにオープンした「ホテル湯西川」は、平日は3人以上1室利用で大人1人7800円(1泊2食付、サービス料込み、入湯料150円別途必要)だが、土曜・特定日やお盆・年末年始は料金設定を変えた。その代わりにレギュラー料理の、うるち米を使った「ばんだい餅」や川魚などを具材にした湯西川名物「いろり料理」に加え、カニなどの特別メニューを用意した。

 実は同ホテルは、11年の東日本大震災の影響で破産した老舗旅館「伴久ホテル」。伊東園ホテルズが購入し、内装、食事会場、風呂などを約1年かけて大改装した。同社は通常、買収後にそれほど手をかけないでオープンするが、今回は破産後1年以上たって買い取ったため、大幅な改装を施した。

 他の宿泊施設に比べて「広くてきれいな客室と豪華な食事」を打ち出した。「宿泊者からは”他の伊東園ホテルよりもいい“とのお声をいただいている」と担当者は話し、シニア層を中心に年間6万人の宿泊客を見込む。伊豆を中心に東日本の温泉地で旅館やリゾートホテルなど運営する伊東園ホテルズ。さまざまな温泉地にホテルを持つ強みを生かし、「今後は低価格路線はそのままに、土地柄に合わせて多様性を持たせていく」としており、今後の出店戦略が注目される。
 (文=苦瓜朋子)
日刊工業新聞2015年07月28日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
「365日同一料金」はプロモーションとしてはキャッチーかもしれないが、マーケティングとして少々雑。値付けはその商品やサービスの背景や歴史などの付加価値に対する、供給者側の思いとかプライドでもあるので。

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