脳データ活用始まる、勉強やストレス対策へ「脳を知って鍛える」

東北大と日立ハイテクが設立のNeU

 NeU(ニュー、東京都千代田区)は小型の脳計測装置を開発し、医療分野に限られていた脳活動の可視化をヘルスケア分野へ展開する。多様なバイタル情報の中で、脳はリアルタイムの可視化が難しかった未開拓領域。脳の健康状態を知り、鍛えることで、新たな価値が生まれる。

人間らしい脳活動を測る


 NeUは東北大学と日立ハイテクロノジーズの脳科学の知見を産業に応用する会社として、2017年に設立された。日立が20年以上取り組む脳計測技術を結集し、重さ30グラムの小さな脳計測装置を開発。ヘアバンドや帽子などに取り付けて、日常生活での脳の活動状態を計測できる。NeUの長谷川清社長は、「脳の状態を知ることは、超高齢化社会や働き方改革に役立てられる」と話す。

 計測の対象は脳の血流状態。700ナノ-900ナノメートル(ナノは10億分の1)の波長の近赤外光を使った光トポグラフィ技術で、深さ2・5センチメートルにあるヘモグロビンの量を測る。神経細胞は糖と酸素を消費するため、酸素を運ぶヘモグロビンが多ければ多いほど脳が活性化している。2・5センチメートルの深さは、言語や知覚、判断などの人間らしい活動を担う大脳皮質の計測にちょうどいい。

 脳の状態を表すデータとして脳波がよく知られるが、長谷川社長は「生活環境には電化製品が多く、表情筋も電気信号を発生するため、日常生活で脳波を正しく測るのは難しい」と説明する。これに対し、血流はこうした影響がないという。

 NeUはこの1-2カ月の間に、他社と共同で同装置を使った進化版の脳を鍛えるトレーニング(脳トレ)やストレスチェック、マーケティングなど多様なサービスを発表した。「これまでの開発期から、企業の要望に応える発展期に入る」(長谷川社長)と意気込む。4年後に売上高15億円を目指す。

脳トレやストレス対策、共感も


 脳トレブームをけん引した東北大の川島隆太教授が同社取締役を務めており、特に脳トレサービスの開発が活発だ。進化版の脳トレは、見える化技術を使い、脳が活性化するとディスプレーの色が青から赤に変化する。人は「赤にしよう」と集中するため、脳トレの効果が上がる。また脳の状態に合わせた問題の最適化や、有酸素運動と脳トレの組み合わせも有効だ。個人向けに小型装置と脳トレサービスのセットで、12月末から3万4800円(税抜き)で販売する予定。

 見える化の方法は他にもある。青から赤に色が変化する照明を使い、読書や勉強などをしながら、何をした時に脳が活性化するか把握できる。変わり種として、10月に幕張メッセで開催された展示会では、脳が活性化するとドローンの飛ぶ高度が上がる実演をした。「脳トレ好きには女性が多い。ドローンで男性にも興味を持ってほしい」(同)という。

 また、これまでの研究で、脳の活性化とリラックスをコントロールできるようになれば、ストレスに強くなることがわかっている。メンタルヘルス対策サービスを提供するウェルリンク(東京都目黒区)と共同で、ストレスチェックと川島教授が監修した脳トレをセットで提供するサービス「Best(ベスト)」を法人向けに提供を始めた。無自覚な不調も捉え、生き生きとした職場づくりをサポートする。

 このほかに、共感した時に活性化する部分の血流を測り、マーケティングに利用する。危険作業時の作業者をモニタリングする、といったこともできる。どんな場所で、何と組み合わせるかによって、脳の活動データ利用の可能性は広がる。

脳を活性化させて、ドローンを高く飛ばす

日刊工業新聞 2018年10月31日掲載分を加筆

梶原 洵子

梶原 洵子
10月31日
この記事のファシリテーター

脳の活性化とリラックスを自分で制御できると、ストレスにも強くなるそうです。脳の活動がわかるようになると、自分の行動がどう変化するか興味深いです。

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