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NEC会長が説く、「デジタル省」の必要性

境界なきサイバー空間、セキュリティー対策で政府の指導力を
 デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する意識が高まっている。DXで得られる価値は企業や行政単位の部分最適では無く、国家レベルで創造する努力が欠かせない。膨大なデータが経済成長をけん引するデジタル時代において、わが国が国際競争力を保つには、政府の主導力が一段と問われるのは間違いない。
 
 第4次産業革命におけるグローバルサプライチェーンはサイバー空間で動く。世界はネットワークでつながり、受発注から製造、出荷までが自動化される。強固なサイバーセキュリティーを備えたICT(情報通信技術)基盤を整えない企業はサプライチェーンから外されかねない。

 その意味で最も意識しなければならないのが中小企業のセキュリティーだ。中小企業はわが国の7割の価値を生み出していると聞いたことがある。中小企業がグローバルサプライチェーンからはじき出されることになれば、わが国の経済価値は大きく損なわれる。

 並行して行政手続きの電子化を推進する「デジタル・ガバメント」を立ち上げる必要がある。地方公共団体、民間企業までを含めた社会全体のデジタル化を同一の時間軸で進めなければ、どこかにボトルネックができかねない。国家が主体となり、情報の共有化を相当なスピードで進めるべきだ。

 地方行政のデジタル化は、市町村の枠組みを超え、人口500万―1000万人規模でデータを集めるプラットフォームを作り、中央政府につなげることが効率的ではないか。データ収集やメンテナンス性、クラウド化の観点からこのサイズが望ましいと考える。

 中央政府は経団連が提言した「デジタル省(情報経済社会省)」のように、各府省庁を横断して情報通信・デジタル政策を束ねる機能強化が必要だ。イノベーションで社会課題を解決する「ソサエティ5・0」の実現には国境を越えた自由なデータ流通が欠かせない。

 境界なきサイバー空間で価値が生み出されていく一方で、悪意を持ったサイバー攻撃の脅威は広がる。完全に遮断することはできないが、早期対処で問題を最小化できる。サイバー攻撃は最も弱い部分を攻めるのが常道であり、中小企業を含めて対策の優先順位に差をつけるべきではない。

 だが、わが国のサイバーセキュリティー予算は増加傾向にあるとはいえ、人口1人当たりに換算すると米国の10分の1に過ぎない。デジタルエコノミー戦略を所管するデジタル省のような強いリーダーシップの下、ICTでどのような社会を作り上げていくかを議論し、対策を急ぎたい。
(NEC会長・遠藤信博)
            
日刊工業新聞2018年10月26日

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