ニュースイッチ

地域経済をつくり出す資源循環とは?

アミタHD会長兼社長・熊野英介氏
 欧州は資源循環を経済成長に結びつけるサーキュラーエコノミー(CE、循環経済)を推進し、廃棄物処理・リサイクル業で売上高1000億円超の“静脈メジャー”が資源循環で雇用や経済価値を生み出している。対して静脈メジャーがいない日本はCEに移行できないのか。「ローカル経済として資源循環を考えるべきだ」と語るアミタホールディングス(HD)の熊野英介会長兼社長に日本ができるCEを聞いた。

 ―アミタHDは7月、静脈メジャーを目指して同業2社と業務提携しました。狙いは。
 「“メジャー”には規模以外に『重要なポジション』という意味もある。大量生産・大量消費の社会構造が変化し、今後は限られた資源を使い、廃棄物を再資源化する視点が重要となる。CEの確立に静脈メジャーは重要な役割を果たすが、いずれは動脈、静脈の区別はなくなる」

 ―欧州のCEをどう見ていますか。
 「欧州連合(EU)域内で資源を循環させると雇用が生まれ、技術開発が促され、内需が増えて税収も上がる。過去からEUは環境規制を使って域内産業を守ろうとしており、環境政策を実益に結びつけている。日本には環境を産業戦略にする部署がない」

 ―日本はCEに移行できますか。
 「日本はローカル経済の視点だ。地域資源を循環利用すれば地域でお金が回る。地域で経済が動けば国内の経済が回る。当社は宮城県南三陸町で家庭の生ゴミを燃料や堆肥に資源化し、地域で活用する事業に取り組むが、誰も反対しない」

 ―資源を循環利用する地域を日本中に広げるには。
 「行政はシステムを作り替える力を持っており、時代に合わせて雇用を創出できる。政府、学者はもう一度大きな絵を描き、産業界もリテラシーを高め、ローカル経済として資源循環をやるべきだ」

 ―静脈メジャーが主要プレーヤーになるのでしょうか。
 「規模が大きくなりすぎても、意識の届く範囲で資源をネットワーク化すべきだ。手元にある資源が、どこから届いたのか分かる関係性を保っておけると安心だ」

【記者の目/国内での再資源化が理想的】
 中国が2017年末、廃棄物輸入を制限した影響で、日本の廃プラスチックの多くが中国へ資源として輸出されている実態が注目されるようになった。国内で再資源化するのが理想的であり、リサイクル業は地域に雇用を生み出す。地方創生の世論がある今、静脈産業には地域で資源循環事業を興すチャンスがある。(編集委員・松木喬)

アミタHD会長兼社長・熊野英介氏
日刊工業新聞 2018年10月25日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
化石資源を減らそう・繰り返し使おう、脱炭素・再生エネを使おう、と社会要請がいろいろあります。どれも地域単位でできること。いきなり「地球」を考えるよりも、地域は身近。こう言うと地域単位の資源循環は簡単そうですが、始めるのが難しい。企業のノウハウ・活力に期待したいです。

編集部のおすすめ