主力の東南アジア市場が停滞。いすゞ新社長が打つ一手

片山社長「新興国向けトラックは、部品の現地調達率をどこまで引き上げるかが重要」

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片山正則社長
 いすゞ自動車は4月から新興国事業の拡大を柱にした中期経営計画を始動した。最終となる2018年3月期の売上高は15年3月期比約20%増の2兆2000億―2兆3000億円に設定した。アジアで相次ぎ生産拠点を立ち上げ、新興国向けトラックの開発や技術力強化にも取り組む。6月に社長に就任した片山正則社長に今後の戦略を聞いた。

 ―1月にインドネシアで稼働したトラック工場の年産能力は5万2000台。最終的に8万台まで拡大できますが、輸出も視野に入れていますか。
 「インドネシア市場でシェア約30%の獲得を目標に計画を立てるが、国内だけで8万台は埋まらない。しかし輸出競争力を高めるにはボリュームが必要。まず国内で販売台数を伸ばすことが先で、輸出を前提に工場を立ち上げたわけではない」

 ―タイのトラック工場との役割に違いはありますか。
 「タイも現状は国内向けのみだが、輸出も考えている。14年3月にタイで新興国向けトラックの開発統括会社『いすゞ・グローバル・CVエンジニアリング・センター(IGCE)』を設立し、中型トラックを開発している。このトラックをインドネシアとタイでつくり分ける計画だが、両国以外への輸出車両をどちらで生産するかはまだ調整している」

 ―IGCEを立ち上げ、日本から新興国向けトラックの開発機能を移管しました。
 「タイで開発から調達まで完結するので、しがらみもなく思い切ったことができる。新興国向けトラックは部品の現地調達率を40%からどこまで引き上げるかが重要で、日系部品メーカーを採用しないわけではなく、地場メーカーを含めた調達をやっていく。実際に調達を始めたが、品質や価格の面で驚くような結果も出ている」

 ―海外主力の東南アジア諸国連合では経済共同体(AEC)が15年末に発足します。
 「AEC発足で国境を越えた大規模輸送の拡大が見込まれる。大型商用車の開発で連携する中国の慶鈴汽車グループとは大型トラックを投入したばかりだが、さらに大きなトラックを考える必要があると思っている」

 ―衝突被害軽減ブレーキなどの安全技術分野で米ゼネラルモーターズ(GM)との協業はありますか。
 「今のところやっていない。要素技術ではニーズがあるが、乗用車と同じ装備を採用するわけにはいかない。安全技術で乗用車が先頭を走っていることは間違いない。ただ、車両の重さを考えると商用車はすぐに停止できないなど技術的にも難しい。乗用車メーカーと距離を置いた場合に安全技術で後れを取るのではと心配したが、デバイスメーカーとも連携しており、実際はついていけている」

 【記者の目/先を見据えた成長投資継続】
 主力の東南アジア市場が低迷するなど足元の経営環境は厳しい。しかし16年にインドでピックアップトラックの生産拠点を立ち上げるなど10―20年先を見据えた成長投資を継続する。また資本関係の連携は「今のところ考えていない」(片山社長)が、量の確保が難しい大型トラックや安全技術などの協業は否定しておらず、新体制のかじ取りが注目される。
 (聞き手=西沢亮)

日刊工業新聞2015年07月27日 自動車面

COMMENT

斉藤陽一
編集局第一産業部
デスク

いすゞは2000年代前半の経営危機後、細井前社長(現会長)まで4代続けて企画畑出身者が社長を務めてきました。片山新社長は15年ぶりの技術系出身の社長です。東南アジア市場では欧州商用車メーカーとの競争が激しさを増しています。技術やサービスでどう他社を上回るか。新社長の手腕に注目です。

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