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揺れる東芝「不信の連鎖を止める」弁護士からの助言

日比谷パーク法律事務所・久保利英明氏「財務部や経営監査部に外部人材を」
揺れる東芝「不信の連鎖を止める」弁護士からの助言

21日の東芝の記者会見

 東芝による不適切会計問題は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)が形式だけでは機能しないことを改めて印象づけた。産業界が、この問題から何を学ぶべきか。企業統治問題の第一人者である弁護士の久保利英明氏に聞いた。

 ―極論からお聞きします。今回、東芝が損失を出し切れば来年以降の業績急回復もあり得ます。そういう再建は可能ですか。
 「そうなっても『財務が嘘をついている』と思われる。不信の連鎖を生んでしまう」
 「不祥事を補うのは再建の意思が沸き上がるような第三者の指摘だ。厳しすぎる内容であるほど外部は納得する。今回の第三者委員会の報告書は短期間でまとめただけに仕方ないかも知れないが、出来は良くない」

 ―問題点は。
 「一番いけないのは原因を明確にせず”企業風土“のせいにしたことだ。トップが原因なら交代すればいい。そもそも違法性の認識のある行為は、経営判断とは呼べない」
 「上司の命令に従う企業風土というが、20万人のグループ社員が社長の命令ひとつで動くのか。そんなのはブラック企業だろう。社員は替えられないのだから、だれが経営者になっても風土は変わらない。私が社外取締役を依頼されてもとても受けられない」

 ―久保利さんなら、どう助言しますか。
 「財務部や経営監査部に、公認会計士や弁護士の資格を持つ外部人材をたくさん入れて刷新する。社員と一緒に『社長に命じられても不正はしない』と誓約書を出させる。また財務も他部門と人事ローテーションをする。最低でもそのくらいはすべきだろう」
 「社長に『必達』というノルマを課せられたら、社員はペナルティーを恐れて不正を考える。内部監査も機能しなくなる。そうならないよう、社長の命令に抵抗する人たちを守ってやる仕組みが必要だ」

 ―他の企業が学ぶべきことは。
 「重要なことは社内に活発な議論があることと、上司に抵抗する気持ちだ。それがないと単純ミスであれ、意図的な不正であれ防げない」
 「多くの日本企業は、新卒を採用して自社のカラーに育て上げる。優れた部分もあるんだろう。しかし『東芝人』だけが集まってなあなあでやってきた結果が、今度の問題につながったと思わなければならない。昔ながらの”東芝流“をやめることができた時に、東芝は日本一の電機メーカーになれるのではないか」
 (聞き手=加藤正史)
 
日刊工業新聞2015年07月27日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
外国人の役員や幹部を登用する動きがある。だいたいがマーケティングや営業、コミュニケーション部門。大胆に企業のあり方を変えるなら、その企業風土を性格付け、最もコンサバティブな人事部のトップに据えるべき。どこの企業も一番嫌がるだろうが。

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