大阪に決定!万博は地盤沈下「関西」を救うか?
2025年の国際博覧会(万博)の開催が大阪市に決まった。23日(日本時間24日未明)からフランスのパリで博覧会国際事務局(BIE)の総会が開かれ、BIE加盟国による投票で、日本はライバルのロシアやアゼルバイジャンを抑えて開催国に選ばれた。
現地で投票後に記者会見した世耕弘成経済産業相は、「心の底からうれしい」と喜んだ。一方、2025日本万国博覧会誘致委員会の榊原定征会長(経団連名誉会長)は「これからが本番」と気を引き締めた。
大阪府の松井一郎知事や関西経済連合会の松本正義会長らも現地で投票を見守る中、初回の投票は日本が85票、ロシアが48票、アゼルバイジャンは23票。初回の投票で得票数が3分の2に届く国がない場合、上位2カ国で決戦投票となるルールで、日本はロシアとの決選投票に進んだ。結果は日本が92票を獲得し、61票のロシアを大差で破り誘致を勝ち取った。
55年ぶりの誘致なるか―。大阪・関西で開催を目指す2025年国際博覧会(万博)の誘致レースが残り1カ月を切った。日本は政府と大阪府・市、経済界が三位一体となってアピールし、ライバルであるロシアとアゼルバイジャンより優位に立とうとしている。しかし、どの国が誘致に成功するかは投票日まで分からない。誘致レースはこれからが正念場だ。(大阪・青木俊次)
フランス・パリの博覧会国際事務局(BIE)による開催地決定の投票は11月23日に実施する。3カ国の誘致活動は、ロシアとアゼルバイジャンは政治主導が目立つのに比べ、日本は官民一体の取り組みが際立つ。特に経済界の活動戦略は、関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)の発案だ。
日本が万博誘致に立候補を表明したのは17年4月。その後、松本会長は「商社からパリに2人を常駐させ、誘致を支援する」との方針を示し、18年2月に活動を始めた。
担当のパリ常駐者は国の万博誘致特使として、1人はパリで欧州を中心にBIE加盟国の代表者や大使館を訪問。もう1人は、外務省などと加盟国を巡回してきた。日本開催は、加盟国と日本との事業を加速させるほか、開催地の大阪・関西はアジアとつながりが深く、事業拡大にもつながる点を訴えた。
特に欧州は、開催地決定に経済界の意向を尊重する傾向があるとされる。関経連の小林義彦万博推進室長は、経済界が前面に出る日本の活動は「非常に有効」と指摘する。
各国に駐在する大手商社の58人も心強い存在だ。加盟国と結ぶ事業の関係性を誘致に生かすため、国と連携して各国の経済団体、企業、政府要人への訪問を進めるなど、地道かつ継続的に活動してきた。これらの活動は、加盟国から「投資先と直接会える」(小林室長)と好評。誘致を確実に後押ししている。
関西の地方自治体や経済界にとって、万博誘致は、長らく地盤沈下していると言われてきた関西経済を成長路線に乗せる起爆剤にしたいとの思惑がある。
万博に向け再開発やインフラ整備が具体化すれば、国内外から投資やベンチャー企業を関西に呼び込むきっかけにもなる。新産業創出も期待できる。
政府の試算によると、万博誘致の経済効果は約2兆円。一方で大阪府の試算では地下鉄延伸や道路の拡幅といった交通インフラ整備に700億円以上を見込む。万博は関西が強みとするiPS細胞(人工多能性幹細胞)や再生医療といった健康・医療、環境やエネルギー分野などの技術やサービスを切り口に、未来の姿を示す絶好の機会だ。
官民の誘致組織「2025日本万国博覧会誘致委員会」も、最後の追い込みをかける。6日に都内で開かれたアフリカ開発会議閣僚会合に、榊原定征会長(経団連名誉会長)、松井一郎会長代行(大阪府知事)らが出席。BIE加盟国170カ国中、49カ国と多数を占めるアフリカ地域へ、支持を広く訴えた。
榊原会長は出席者に「万博を通じ、未来をともに切り開こう」と呼びかけた。松井会長代行も「是非私たちに支持を」と要請した。
誘致委は9日にもパリでBIE加盟国向け誘致フォーラムを開催。松本会長代行(関経連会長)をはじめ、副会長の尾崎裕大阪商工会議所会頭(大阪ガス会長)や大阪市の吉村洋文市長らが出席するなど、精力的だ。
尾崎副会長は誘致活動を「オセロゲーム」に例える。「最後まで一生懸命やらないといけない」と、気を引き締める。吉村大阪市長も同じく誘致活動を「オセロの(石の)ひっくり返し合い」と表現。「非常に厳しい」と話す一方、「日本の経済界などによる交流が影響する」と、三位一体の誘致活動を高く評価する。
BIE総会の投票まで残り1カ月。態度を表明していない国を中心に、支持表明の口上書や口頭による約束、支持を得た関係者の確度を高める。競合国をおとしめるネガティブキャンペーンなどへの備えも欠かせない。
ただ、投票は無記名のボタン式。どの国がどこに投票したかは分からないため、最後まで気を抜けない。国同士のオセロゲームは、投票日当日まで続く。
現地で投票後に記者会見した世耕弘成経済産業相は、「心の底からうれしい」と喜んだ。一方、2025日本万国博覧会誘致委員会の榊原定征会長(経団連名誉会長)は「これからが本番」と気を引き締めた。
大阪府の松井一郎知事や関西経済連合会の松本正義会長らも現地で投票を見守る中、初回の投票は日本が85票、ロシアが48票、アゼルバイジャンは23票。初回の投票で得票数が3分の2に届く国がない場合、上位2カ国で決戦投票となるルールで、日本はロシアとの決選投票に進んだ。結果は日本が92票を獲得し、61票のロシアを大差で破り誘致を勝ち取った。
経済効果2兆円?
55年ぶりの誘致なるか―。大阪・関西で開催を目指す2025年国際博覧会(万博)の誘致レースが残り1カ月を切った。日本は政府と大阪府・市、経済界が三位一体となってアピールし、ライバルであるロシアとアゼルバイジャンより優位に立とうとしている。しかし、どの国が誘致に成功するかは投票日まで分からない。誘致レースはこれからが正念場だ。(大阪・青木俊次)
医療・環境の強み示す好機
フランス・パリの博覧会国際事務局(BIE)による開催地決定の投票は11月23日に実施する。3カ国の誘致活動は、ロシアとアゼルバイジャンは政治主導が目立つのに比べ、日本は官民一体の取り組みが際立つ。特に経済界の活動戦略は、関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)の発案だ。
日本が万博誘致に立候補を表明したのは17年4月。その後、松本会長は「商社からパリに2人を常駐させ、誘致を支援する」との方針を示し、18年2月に活動を始めた。
担当のパリ常駐者は国の万博誘致特使として、1人はパリで欧州を中心にBIE加盟国の代表者や大使館を訪問。もう1人は、外務省などと加盟国を巡回してきた。日本開催は、加盟国と日本との事業を加速させるほか、開催地の大阪・関西はアジアとつながりが深く、事業拡大にもつながる点を訴えた。
特に欧州は、開催地決定に経済界の意向を尊重する傾向があるとされる。関経連の小林義彦万博推進室長は、経済界が前面に出る日本の活動は「非常に有効」と指摘する。
各国に駐在する大手商社の58人も心強い存在だ。加盟国と結ぶ事業の関係性を誘致に生かすため、国と連携して各国の経済団体、企業、政府要人への訪問を進めるなど、地道かつ継続的に活動してきた。これらの活動は、加盟国から「投資先と直接会える」(小林室長)と好評。誘致を確実に後押ししている。
関西の地方自治体や経済界にとって、万博誘致は、長らく地盤沈下していると言われてきた関西経済を成長路線に乗せる起爆剤にしたいとの思惑がある。
万博に向け再開発やインフラ整備が具体化すれば、国内外から投資やベンチャー企業を関西に呼び込むきっかけにもなる。新産業創出も期待できる。
政府の試算によると、万博誘致の経済効果は約2兆円。一方で大阪府の試算では地下鉄延伸や道路の拡幅といった交通インフラ整備に700億円以上を見込む。万博は関西が強みとするiPS細胞(人工多能性幹細胞)や再生医療といった健康・医療、環境やエネルギー分野などの技術やサービスを切り口に、未来の姿を示す絶好の機会だ。
官民で勝ち取る! 誘致は“オセロ”、最後まで気抜けず
官民の誘致組織「2025日本万国博覧会誘致委員会」も、最後の追い込みをかける。6日に都内で開かれたアフリカ開発会議閣僚会合に、榊原定征会長(経団連名誉会長)、松井一郎会長代行(大阪府知事)らが出席。BIE加盟国170カ国中、49カ国と多数を占めるアフリカ地域へ、支持を広く訴えた。
榊原会長は出席者に「万博を通じ、未来をともに切り開こう」と呼びかけた。松井会長代行も「是非私たちに支持を」と要請した。
誘致委は9日にもパリでBIE加盟国向け誘致フォーラムを開催。松本会長代行(関経連会長)をはじめ、副会長の尾崎裕大阪商工会議所会頭(大阪ガス会長)や大阪市の吉村洋文市長らが出席するなど、精力的だ。
尾崎副会長は誘致活動を「オセロゲーム」に例える。「最後まで一生懸命やらないといけない」と、気を引き締める。吉村大阪市長も同じく誘致活動を「オセロの(石の)ひっくり返し合い」と表現。「非常に厳しい」と話す一方、「日本の経済界などによる交流が影響する」と、三位一体の誘致活動を高く評価する。
BIE総会の投票まで残り1カ月。態度を表明していない国を中心に、支持表明の口上書や口頭による約束、支持を得た関係者の確度を高める。競合国をおとしめるネガティブキャンペーンなどへの備えも欠かせない。
ただ、投票は無記名のボタン式。どの国がどこに投票したかは分からないため、最後まで気を抜けない。国同士のオセロゲームは、投票日当日まで続く。
日刊工業新聞2018年10月23日