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GREE、ゲーム事業復活を担う「データ×顧客の声」

どういうところで面白さを感じているかを細かく分析
 「これまではデータが見えすぎていて、それに頼りすぎていた」。グリーの主力である国内ゲーム事業。そのデータ分析を担当するジャパンゲーム事業本部マーケティング部の杉山綱祐アソシエイトマネージャーはこう振り返る。従来のデータ利活用は売り上げや利用者数、継続率などの数字を重視していた。そこから一歩踏み出す形で「顧客の声を掛け合わせた分析手法」を取り入れた。

 同社がデータを活用するのはゲーム事業の課題を解決するため。目下の課題はゲーム業界の変化にいかに対応し、ヒットタイトルを生み出すか。これまではインターネット上で遊べるウェブゲームを得意としてきた。だが、現在活況なのはスマートフォン専用アプリケーション(応用ソフト)。このスマホアプリに関わる課題を、あらゆるデータを駆使して解決していく。

 大半のBツーC(対消費者)企業は「お客さま相談窓口」やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じ、顧客の声をデータベース化し商品の改善や開発に生かす。だが「当社のようなインターネットを活用する企業は数字データが簡単に手に入るため『顧客満足度の向上』よりも『結果』ばかりを重視し、大事な点を見逃しがち」(マーケティング部の森田想平氏)という。その結果か同社は一時期、右肩上がりだった業績に陰りが見えた。

 そこで自社の公式コミュニティーサイトやSNSなどで交わされるゲームで遊ぶ顧客の声を拾い上げ分析し、それをゲーム企画や運営に生かしている。分析結果は開発などの制作に関わる部署にフィードバックする。

 実際、あるゲームの利用者が伸びない現状があった。そこで社内でゲームをプレイしながら、今後の改善方針などを立てていた。だが、コミュニティーサイトに「ルールの決め方が悪い」という顧客の声を発見。その部分を改善したところ、ダウンロード数が増えた。この出来事をきっかけに「顧客の声はデータの一種であることに気づかされた」(杉山アソシエイトマネージャー)。
 

アソシエイトマネージャー 杉山綱祐氏インタビュー


 ―データ分析の体制は。
 「同部内に約20人の専門部隊があり、分析に特化したチームとデータ分析の基盤を構築するチームで構成している。分析専門チームには1人に3タイトルのゲームを担当させており、徹底的にゲームをやり込ませている。それが分析時に仮説を立てるために必要な工程だ」

 ―分析内容は。
 「テレビCMなどプロモーション活動部分と、内容や企画などゲーム自体の両面を分析する。プロモーションは反応率などを分析し、費用の最適化などに役立っている。ゲームは『どういうところで面白さを感じているか』などを細かく分析している」

 ―分析専門家に必要な要素は。
 「まずはゲームが本当に好きで『こういうゲームをつくりたい』という意志を高く持つ人材が好ましい。ITのスキルも必要だが、それは後からいくらでも身につけられる。コミュニケーション能力は必須だ」
 (聞き手=松沢紗枝)

 ※日刊工業新聞で月曜日に「データサイエンティスト・未来を読み解く」を連載中
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
結構あたり前のことがやれてなかったのかと思う。独りよがりではまずいが、そのサービスや商品を『これは絶対に面白い!』という実感が開発リーダーにあるかどうか。単なる数字の分析では深みがない。データサイエンティストはクリエイターの実感と、顧客の声をどうつなぎ合わせてあげられるか。とても人間的な仕事である。

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