ヘリオスはiPS細胞治療で創薬ベンチャーの旗手になれるか!?

2020年に眼科領域での医薬品販売と、本丸である肝臓の臓器構築急ぐ

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細胞を培養するラボ
 さまざまな細胞に変化(分化)し、増殖する能力を備えたiPS細胞(人工多能性幹細胞)。山中伸弥京都大学教授によるヒトiPS細胞の樹立成功は、医学研究、幹細胞研究の輝かしい一歩だった。では、iPS細胞は今後どのように実際の医療に生かされ、世界で広く使用されるようになり、医療製品として企業によって製造や販売されていくのだろうか。その過程を見ていくことになりそうな存在が、6月に東京証券取引所マザーズ市場に上場したベンチャー、ヘリオスだ。

 【世界初の事例】
 iPS細胞の医療応用は、次のような考え方を基にしている。社長の鍵本忠尚は「病気は、つまるところ体のどの細胞が悪くなるかが定義している。iPS細胞でそういった細胞を作れば(病気の原因になっている細胞をiPS細胞由来の元気な細胞に置き換えてやれば)、根治に近い治療ができるのではないか」と話す。

 ヒトへの投与で重要な一歩を進めたのが、2014年9月に理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらが行った、ウェット型の加齢黄斑変性患者に対する臨床研究。移植手術は成功し、世界初の事例となった。手術では、患者自身の皮膚細胞からiPS細胞を作り、網膜色素上皮細胞(RPE細胞)に分化誘導し、さらにそれをシート状に培養加工して移植した。患者本人のために少量を作ったため、コストは数千万円かかったとされる。

 【培養効率向上】
 ヘリオスは、理研の方法を発展させる。他家細胞(他人の細胞)を基にし、iPS細胞を使ってRPE細胞を大量に培養。懸濁液にして注射する方法を予定しており、損傷、変性した患部の細胞を元気な細胞に置き換えることで治療を目指す。培養効率は100倍以上向上できるという。

 最先端の研究成果をどのように企業活動にしていくか。「11年に創業した時、iPS細胞を世に出すバリューチェーンは存在せず、ゼロから作ることになった」(鍵本)。結果、ニコンや渋谷工業、新日本科学、大日本住友製薬など、技術評価、知財、製造、非臨床試験、臨床試験、販売からなる「バリューチェーンを担う企業がすべて当社と資本関係にある、オールジャパン体制」(同)となった。

 14年11月に施行された改正薬事法により、再生医療製品に一定の条件で素早く仮の薬事承認を与える制度がスタート。同制度を利用し、日本で17年から約2年間臨床試験をし、19年に承認申請、20年の上市(発売)とのスケジュールを描く。
 眼科領域でiPS細胞の医療応用が本格化した後、ないし並行してさらに本丸として控えるのが肝臓などの臓器。ヘリオスは横浜市立大学と組み、3次元を含む臓器構築に取り組んでいる。(敬称略)
 (文=米今真一郎)
 【企業プロフィル】
代表=鍵本忠尚氏
住所=東京都港区
資本金=48億7862万円(15年6月)
設立=11年

日刊工業新聞2015年07月27日 中小・ベンチャー・中小政策面

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
執行役員 DX担当

どうしても期待が集まってしまうのは仕方がない。現在、開発を進めている「加齢黄斑変性」の治療薬は、日本だけで国内で約70万人の患者がいるといわれている。大日本住友製薬との共同研究で研究開発費も得ている。

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