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4―6月期業績が過去最高だった日本電産が抱える最大のリスク

「新卒が育つまでに10年かかる。成長に人材が追いつくかどうか」(永守会長兼社長)
4―6月期業績が過去最高だった日本電産が抱える最大のリスク

リクルート姿の学生に講演する永守会長兼社長

 積極的なM&A(合併・買収)ばかりが注目される日本電産だが、実は人材獲得でも攻勢を強めている。幹部クラスのスカウト、中途採用に加えて、新卒採用にも力を入れる。2014年度は売上高1兆円達成した同社だが、自動車やロボット、産業機器などモーター需要が右肩上がりを続ける中、さらに20年度に2兆円、30年度には10兆円の達成を掲げ、成長への意欲は限りない。そのためには質、量ともに十分な人材を確保することが欠かせない。
 
 3月に大阪駅前のグランフロント大阪で開かれた講演会。リクルートスーツに身を包んだ学生に向けて、永守重信会長兼社長が熱弁をふるっていた。「我々は社会に貢献していこうという強い意志を持っている。(学生の人気ランキング上位の)有名企業に入っても“ワンオブゼム”になるだけだ」。

 創業当初は自ら新卒獲得に走り回った永守会長も、企業規模の拡大とともに学生に直接語りかける機会は減少した。「最後は1部上場したころかな」と振り返る。ただ、企業向け(BツーB)事業が中心である同社は、ビジネス界でこそ知名度抜群だが、学生への浸透度は決して高くはない。そこで再びトップ自ら学生へメッセージを投げかけることにした。16年には東京での開催も検討している。

 同社の新卒採用は毎年200人から300人。15年4月も270人程度が入社。「基準に達しているかどうかで決めており、人数の枠は設けていない」と永守会長は言うものの、現在の成長ペースを続けると「20年には500人必要」。1年前に買収した日本電産エレシス(旧ホンダエレシス)に対しては、「これまで新卒は毎年数人程度しか採用していなかったが、来年は50人採れと言っている」という。

 中途採用は新卒採用以上に積極的だ。特にリストラを加速する大手電機メーカーからの人材獲得が増えており、「この1年で部長級以上だけで100人以上を採用した」。また、14年に操業を始めた中央モーター基礎技術研究所(川崎市幸区)では、初代所長に日立製作所で中央研究所の所長も務めた福永泰氏を招聘(しょうへい)。16年に開設予定の生産技術研究所でも「大物に就任を依頼している」と永守会長は明かす。

 出張時にビジネスクラスで乗り合わせたことがきっかけでスカウトしたことも一度や二度ではない永守会長だけに、人材の問題は常に頭から離れない。

 「新卒が育つまでに10年かかるが、10年なんてすぐたってしまう。最大のリスクは成長に人材が追いつくかどうか。布団に入ると、ここが足りない、あそこが足りないと考えてばかりいる」と苦笑いする。
 (文=尾本憲由)

2015年03月03日電機・電子部品・情報・通信面の記事を一部修正



6四半期連続で増収、自動車関連が伸びる


 日本電産が22日発表した2015年4―6月期連結決算は、売上高と全利益項目で四半期として過去最高を更新した。6四半期連続で増収となった売上高は、前年同期比18・7%増の2850億円、9四半期連続で増益の営業利益は同24・1%増の310億円。すべての製品セグメントで営業増益となった。

 業績をけん引したのは引き続き「車載及び家電・商業・産業用」で、売上高は同24・6%増の1373億円。特に車載向けに限れば同40・9%増の660億円と大幅な増収となった。先進運転支援システム(ADAS)関連製品が順調に販売を伸ばしている。一方「精密小型モータ」はハードディスクドライブ(HDD)用が数量を減らしながらも、そのほかの小型モーターがカバーした。

 同社では同日、インドネシアの車載カメラ用ガラスレンズメーカーであるPTナガタオプトインドネシア(ボゴール県)の買収も発表した。同社の14年売上高は393万ドル(約4億8000万円)。
日刊工業新聞2015年07月23日3面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
電機メーカーで転職活動をしている知り合いの部長クラスと話すと、だいたいエージェントから最初に話が来るのは日本電産というケースが結構多い。

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