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日産はどこまでEVに賭けるのか?年内に300キロ走る「リーフ」投入

「400キロ」電池の開発進むも、ハイブリッド車の市場開拓に乗り出す
日産はどこまでEVに賭けるのか?年内に300キロ走る「リーフ」投入

基幹部品のリチウムイオン電池はグループ会社から調達(現行EV「リーフ」)

 日産自動車は2015年内に電気自動車(EV)「リーフ」で、航続距離を現行比約3割増の300キロメートル程度まで伸ばしたモデルを発売する。基幹部品となるリチウムイオン電池を改良して航続距離を伸ばした。現行リーフと同様にグループ会社からリチウムイオン電池を調達する。EV普及のネックになっている航続距離の不安を軽減してEVの拡販につなげる。

 リチウムイオン電池の主要構成部材である正極に、現行リーフ向けのマンガン系材料を改良したものを採用し、電池の容積を増やさずに航続距離を伸ばす。現行リーフと同じく、NECとの合弁会社オートモーティブエナジーサプライ(AESC、神奈川県座間市)が生産するラミネート型のリチウムイオン電池を採用する。同時期に米国など海外でも発売する計画だ。

 リーフは10年12月に発売以来、世界累計18万台以上を販売した最量販EV。だが計画より販売が伸び悩んでいる。充電インフラと1回の充電で走行できる航続距離がネックとなっている。

 日本では自動車メーカーの協業や政府の後押しもあり、充電器は1万4000基以上設置され普及しつつある。一方で日産はEVの航続距離向上へ研究開発を進めており、6月に開いた株主総会でカルロス・ゴーン社長は、「今年後半には、航続距離拡大に向けた最初のステップを紹介する」と話していた。

 また、日産は基幹部品であるリチウムイオン電池の調達について当初はコア技術として内製にこだわっていたが、韓国・LG化学などの低コスト攻勢を背景に、「外部との競争の中で最適なものを採用する」(ゴーン社長)と方針転換しており、一層のEV普及に向けて、今後の電池の調達先が注目されている。

技術開発のトップが語る戦略 EV軸は変わらないがターボもハイブリッドも・・


 平井俊弘常務執行役員インタビュー「航続距離400キロメートルの電池開発が進んでいる」
  ―環境戦略の基本は。
 「電気自動車(EV)と低燃費車の普及が環境戦略の大方針だ。EVを軸とした戦略はぶれずに進め、従来のエンジンは『ダウンサイジングターボ』、電動車両はハイブリッド車(HV)に力を入れる。メーカーの押しつけではなく客に価値を提供して普及させる」

 ―従来エンジンの開発アプローチは。
 「ダウンサイジングターボで小排気量にすることをベースに燃焼自体の効率も上げる。最新成果を商品化第1弾として昨年一部改良したSUV『ジューク』に盛り込んだ。地道な取り組みだが、熱効率40%以上を目指し改良を進めている」

 ―EVは電池がカギを握ります。
 「航続距離400キロメートルを視野に入れた電池の開発が着実に進んでいる。電池の革新とインフラの整備でEVは確実に普及する。パワー半導体の開発も進めインバーターの改良も進めている」

 ―HVで競合に後れをとっています。
 「SUV『エクストレイル』のHVに搭載した1モーター2クラッチ方式を柱に普及する。ミニバン『セレナ』に搭載したマイクロハイブリッドシステムも進化させる。システムが小さいため車体の骨格を変える必要がなくスペースも広くとれる。普及という点ではこちらの方が勢いがある」

 ―新タイプのHVは。
 「日産の強みはEV技術だ。EVの構成要素である電池とモーターとインバーターの技術がある。だからHVでも選択肢に幅ができる。例えば『レンジエクステンダー』や『シリーズ式ハイブリッド』のようにエンジンで発電した電力を使ってモーターで駆動するタイプでは競争力のあるシステムができる。HVは日本を除き普及していない。“EVライク”な価値を付加してHVを世界で普及させる」

 ―アライアンスも活用しています。
 「地域に固有な環境技術はアライアンスを使う。例えばディーゼルエンジンはルノーと連携し、ディーゼル主流の欧州では日本車の中でも競争力がある。日産の自前の技術はEVでありガソリンエンジンでありHVだ。そこは自前で磨きをかける」
 
 【記者の目/2強猛追、自信の表れ】日本では人気のHVだが海外でなかなか普及しない。その現状を日産が打開するという姿勢をみせたのは正直意外だった。日産はEVに傾斜し、HVでトヨタ自動車ホンダに後れをとった。HV2強ですら海外の普及で苦戦している。2強に追いつくだけでなく自らがHVの海外への扉を開くという。相当の自信の表れだろう。EVライクなHVが見物だ。
 (聞き手=池田勝敏)

2015年05月22日自動車面



電池子会社は他の自動車メーカーへの売り込み強化


 加東重明オートモーティブエナジーサプライ社長「(日産は)安くて良いものであれば外部調達する方針に変わった」

 ―親会社であり主要納入先の日産自動車が、電気自動車(EV)のバッテリーの外部調達を視野に入れています。
 「日産はかつてEVの基幹部品であるリチウムイオン二次電池をコア技術として内製的に位置づけていたが、安くて良いものであれば外部から調達するという方針に変わったようだ。当社としては日産への供給に加え、他の完成車メーカーへの売り込みも強化していきたい」

 ―韓国のLG化学を筆頭に競合が競争力を増しています。
 「品質もコストもLGに負けない。当社の電池は15万台のEVに搭載され市場で重大不具合はゼロだ。自動化ラインで不純物混入を防止し、原材料からセル、パック、車両まで一貫した品質管理を整えている。コスト面では材料メーカーに頑張ってもらう部分もあるが、設備を流用して投資を抑えるなどあらゆる手を打ってコスト低減を進めている」

 ―他の完成車メーカーとの取引は。
 「売り込み中だ。ほとんどの国内完成車メーカーからアプローチを受けている。各完成車がグループに電池会社を持っており、比較のためにアプローチしているかもしれないが、主要納入先の日産EV『リーフ』の実績が効いていると思う」

 ―工場の稼働率向上が課題です。
 「年産能力はリーフ換算で8万7000台分で今の稼働率は6割。日産や仏ルノーだけでなく他の完成車メーカーや、電動車両以外の用途を開拓して稼働率を上げ、競争力を上げたい」

 【記者の目/他販拡大ポイント】
 2014年に社長に就任した加東氏のキーワードは「自立」。日産自動車のEV販売は徐々に伸びているが、当初計画からは遠い実績で電池工場の稼働率低迷を招いている。日産の販売実績に左右される体質から脱却して自立するには、他の完成車メーカーへの納入や電動車両以外の用途拡大がポイントになりそうだ。
 (聞き手=池田勝敏)

2015年01月21日 自動車面

日刊工業新聞2015年07月24日 1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
300キロになっても販売が劇的に変わると思えない。変わり目があれとすれば、スマートカー(自動運転車も含め)というイノベーションの大きな波が来た時に、日産が乗り遅れない経営判断をすることと、要素技術を持っておくことだろう。

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