アサヒビール、クラフト本格始動―隅田川沿い本社ビル隣に発信拠点オープン

シェア5割強の最大手、出荷額減少の流れ変えるか?

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アサヒビールが開設したクラフトビール店
 アサヒビールが東京・隅田川沿いの本社ビルに隣接するブルワリーレストランをクラフトビール情報の発信拠点として改装オープン、クラフトビール事業に注力する構えを打ち出した。クラフトビール事業はキリンビール、サッポロビールが本格展開を始めており、アサヒはやや後発。だが、ビールでシェア5割強の最大手だけに業界に与える影響は大きい。アサヒのクラフトビール強化は、業界全体の流れを変えることになるのか。

 【地ビールを支援】
 政府の規制緩和で全国的な地ビールブームになった1993年以降、アサヒが参入を支援した小規模ビール事業者は約40社にのぼる。同社にはクラフトビール市場を最初に切り開いたのは当社だとの自負がある。
 アサヒは94年にクラフトビール製造会社の隅田川ブルーイングを設立。このほど改装オープンした店はこの流れをくむもので、店内に仕込み釜と煮沸釜を備える。店には熟練の醸造士が常駐し、仕込み、発酵から熟成まで一貫醸造を行う。

 【軽快な味特徴】
 アサヒは今年2月にコンビニエンスストア限定ルートで、クラフトビール商品のシリーズ展開を開始。第1弾は重厚な味わいのポータービール、第2弾は華やかな香りが特徴のペールエールビールで味も液色も、日本ビールで多いピルスナービールとは一線を画す。7月22日に発売した第3弾の「ドライセゾン」はピルスナービールだが、フルーティーな香りを持つシトラホップを人手で投入し、軽快な味が特徴だ。

 各商品の販売数量は多くても10万ケース(1ケースは大瓶20本換算)。ちなみに看板商品「スーパードライ」の販売数量は年1億ケース超。第3のビール「クリアアサヒ」の販売数量も年2800万ケース強。クラフトビール商品を全部合計してもスーパードライと比較すれば1%にも満たない。キリンビールがコンビニ販売で力を入れる「グランドキリン」も販売数量は年40万ケース程度だ。

 それでも各社がクラフトビールに力を入れるのは、若者や女性の消費を取り込み、ビール市場全体を活性化したいからにほかならない。
 ビール市場は14年で課税出荷数量が18年連続減少と”落ち込み“に歯止めがかからない。高齢化で人々が昔のように量を飲まなくなっているだけに、若者をつかむことは重要課題だ。
 米国ではクラフトビール市場が、全体の15%程度まで拡大しているとされる。日本の場合はせいぜい1%強。アサヒは「この先、拡大しても、せいぜい2%強だろう」と予測する。クラフトビールと別に、わが国には原材料や製法にこだわったプレミアムビールもある。一般消費者からすれば、クラフトビールもプレミアムビールも見分けがつきにくい。

 【希少価値】
 プレミアムとの違いは、クラフトが小規模醸造で特定の場所、期間しか手に入らないこと。逆に言えば売れるからといって安易に増産しては希少価値は薄れる。醸造家の思い、醸造設備の個性などで若者を中心に消費者の心をつかみ、ビール市場を上向かせられるか。各社による手探りのチャレンジが続く。
(文=編集委員・嶋田歩)

日刊工業新聞2015年07月24日 建設・エネルギー・生活面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

量をガツンと飲むのではなく、味わいの違いを楽しむ若者が増えているのかもしれません。感度の高い若者にクラフトビールを訴求するためには、PR戦略も鍵を握っていると思います。

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