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富士フイルム、C02排出1万4000t減のカギは小型ボイラ

大型コジェネと併用で蒸気のムダなくす
富士フイルム、C02排出1万4000t減のカギは小型ボイラ

富士宮工場の小型ボイラ。大型コージェネとの併用によって燃料や放熱ロスを抑制

 富士フイルムは富士宮工場(静岡県富士宮市)で生産品に応じて大型コージェネレーション(熱電併給)設備と小型ボイラの稼働を切り替える運用を採用した。生産に必要な蒸気が少なくて済む時は小型ボイラを運転させて燃料の消費を抑える。富士宮工場はこれまでの施策で省エネルギー化の余地が減っていたが、二酸化炭素(CO2)排出量を従来比9%(年1万4000トン)削減できた。

 富士宮工場は医療用や工業用のX線フィルム、機能性フィルムなどを生産する。もともと複数台のコージェネ設備で生産の電気と蒸気を賄っている。ただ、1台の大型コージェネで1時間156トンの蒸気を発生するため、生産品や量によって設備が過剰となっていた。

 そこで蒸気を同10トン供給する小型ボイラを導入。蒸気が大量に必要なら大型コージェネ、少なくて済むならボイラに切り替える運用にした。大型コージェネが停止中は電力需要も下がるため、他のコージェネの発電だけで電気を賄える。

 生産計画の作り方も省エネ重視に変えた。コージェネとボイラの運転割合からエネルギー費がもっとも抑えられるように生産品を切り替えるタイミングを決め、省エネ効果を高めた。

 通常、発電機やボイラはエネルギー供給を減らすと効率が落ち、燃料にムダが生じる。また、蒸気は生産ラインに到達するまでに失われる放熱ロスもあり、多品種少量生産だとエネルギー効率が悪くなる。富士宮工場は小型ボイラの併用によって蒸気量を最適化し、燃料や放熱のロスを抑え、CO2を削減した。
日刊工業新聞 2018年10月1日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
ある調査によると蒸気は生産プロセスに到達するまでに半分が失われています(燃焼ロス、放熱ロスなど)。プロセスに到達しても製品に伝わる熱は当初の数10-数%(モノによりますが)で、廃熱が多いというデータです。熱は電気ほど省エネが進んでいないので、富士フイルムの事例は参考になります。

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