シニア世代の力生かす、証券各社の取り組み―雇用延長や賃金体系見直し
介護と仕事の両立へのサポートも必要に
証券各社はシニア社員の能力を引き出す取り組みを活発化している。日経平均株価が15年ぶりに高値をつけるなど株式市場が好調なほか、少額投資非課税制度(NISA)の普及などで、証券会社の業務も繁忙化している。各社は新入社員の採用を増やす一方、再雇用社員の待遇や雇用制度の改善にも着手。シニア社員の能力を引き出すことで、戦力の充実を進めている。
証券界で先駆けてシニア社員の雇用改革に乗り出したのが大和証券グループだ。再雇用制度「大和マスター制度」を拡充。65歳だった再雇用期間を、営業職は70歳まで延長した。同制度による継続雇用者数は2014年度で約60人。人事を職掌する望月篤執行役員は「支店でベテランが働く姿は若い社員にも刺激になっており、職場の反応はポジティブ」とこれまでの歩みを振り返る。さらに将来のシニア社員の能力アップに向け、将来シニア層となる45歳以上の社員の教育にも今春から着手している。
野村ホールディングスも今春から一部社員の定年を60歳から65歳に引き上げた。さらに営業社員を70歳まで雇用する新制度「FA職」も新たに導入。一連の制度改革の狙いは「営業方針転換。評価制度もストック収入に重点を置いた営業方針に変えている」(野村証券)。さらに営業社員の転勤サイクルも従来の3年から5年に伸ばした。これまで65歳で辞めていた社員が同じ地域で70歳まで働くことができるため、従来以上に長期的な目線に立脚した顧客の資産形成が可能となるという。
シニア社員の活用拡大は、中堅証券にも波及している。水戸証券もシニア社員の雇用制度見直しに着手する。現在は60歳で定年を迎えた後、継続雇用は給料一律の制度だが、今後は能力や成果に見合った給料が受け取れる制度に移行を可能とする。定年時期の見直しも併せて検討する。
シニア社員の活用を進める上で、避けられないテーマとなりつつあるのが介護と仕事の両立だ。政府の調査では、65歳―69歳の男性のうち就業者は約50%と増加傾向にあるが、介護者が65歳以上である老老介護世帯の割合も50%を超えている。高齢化社会がさらに進むなか、能力も意欲もあるが家族の介護のため働けないというケースは、今後増えてくるだろう。シニア社員の経験と知識を企業活動に生かすためには、時間単位での介護休暇の取得など、介護を考慮した労働環境の整備も必要となる。
(文=鳥羽田継之)
証券界で先駆けてシニア社員の雇用改革に乗り出したのが大和証券グループだ。再雇用制度「大和マスター制度」を拡充。65歳だった再雇用期間を、営業職は70歳まで延長した。同制度による継続雇用者数は2014年度で約60人。人事を職掌する望月篤執行役員は「支店でベテランが働く姿は若い社員にも刺激になっており、職場の反応はポジティブ」とこれまでの歩みを振り返る。さらに将来のシニア社員の能力アップに向け、将来シニア層となる45歳以上の社員の教育にも今春から着手している。
野村ホールディングスも今春から一部社員の定年を60歳から65歳に引き上げた。さらに営業社員を70歳まで雇用する新制度「FA職」も新たに導入。一連の制度改革の狙いは「営業方針転換。評価制度もストック収入に重点を置いた営業方針に変えている」(野村証券)。さらに営業社員の転勤サイクルも従来の3年から5年に伸ばした。これまで65歳で辞めていた社員が同じ地域で70歳まで働くことができるため、従来以上に長期的な目線に立脚した顧客の資産形成が可能となるという。
シニア社員の活用拡大は、中堅証券にも波及している。水戸証券もシニア社員の雇用制度見直しに着手する。現在は60歳で定年を迎えた後、継続雇用は給料一律の制度だが、今後は能力や成果に見合った給料が受け取れる制度に移行を可能とする。定年時期の見直しも併せて検討する。
シニア社員の活用を進める上で、避けられないテーマとなりつつあるのが介護と仕事の両立だ。政府の調査では、65歳―69歳の男性のうち就業者は約50%と増加傾向にあるが、介護者が65歳以上である老老介護世帯の割合も50%を超えている。高齢化社会がさらに進むなか、能力も意欲もあるが家族の介護のため働けないというケースは、今後増えてくるだろう。シニア社員の経験と知識を企業活動に生かすためには、時間単位での介護休暇の取得など、介護を考慮した労働環境の整備も必要となる。
(文=鳥羽田継之)
日刊工業新聞7月24日付金融面