ITで儲かるフードトラック増加中、“空き地シェア”の可能性とは?
mellow・柏谷泰行社長
都心のオフィス街などで働く人にこだわりの料理を販売するフードトラックが増えてきた。これを支える1社がmellow(東京都渋谷区、柏谷泰行社長)だ。同社はフードトラック事業者に空きスペース所有者とのマッチングや営業支援を行う。今、同社の契約スペースに出店する店舗の売上高が大幅に伸びている。空き地は日本全国にあり、ランチ以外も可能性がある。空き地を多様な事業者がビジネスに利用する“空き地シェア”が広がるかもしれない。
mellowのフードトラック・プラットフォーム「TLUNCH(トランチ)」は、都内85カ所の空きスペース、フードトラック400店と提携している。利用スペースは、企業のオフィスが入った高層ビル周辺が中心だ。スマートフォン用アプリケーションで、いつどんな店が来るかを紹介。近くで働く人は日替わりで多様なランチを選べる。柏谷社長は「何でもない場所をおいしい場所に変えたい」と話す。
フードトラックは開業にかかる投資を抑えられ、1人でもできることが利点だが、出店場所との交渉やマーケティング、宣伝などを1人で行うのは難しい。そこをトランチが肩代わりする。同社はフードトラックから出店料として売り上げの15%を受け取り、そこから場所の所有者に5%を支払う。契約スペースの増加に伴い、トランチに出店する店舗の月次ランチ売上高は6100万円に増加。1店舗あたりの1日の売上高は前年度比44%増となった。
成長の裏にあるのは、ICTを使った地道な支援だ。社内のデータサイエンティストらが、過去のデータからどこでどんなメニューが売れたか分析し、場所と店舗をマッチングする。初めてトラックの出る場所も、類似エリアのデータから売れるメニューを予想できる。例えば、「西新橋と日本橋の売れ方は似ている」(同)という。
また、エリアごとに最高と最低、平均の売上高や売上高の推移を見える化し、相対的に自店の売り上げを評価できるようにした。柏谷社長は、「飲食店の成長を妨げるのは『場所のせい』にすること」と指摘する。相対比較ができれば、正しく軌道修正できる。
フードトラック同士のビジネスチャットも運営し、エリア全体の売り上げ拡大も後押ししている。エリアごとに、水たまりなどの出店場所の注意点や何食売れたかなど、次に来る事業者が参考にできる情報を共有している。店舗同士はライバルでもあるが、「こだわりを持つ職人同士は仲がいい」(同)。弁当箱や箸の貸し借りもよくあるという。何より来店者に「この場所で食べればハズレがない」と思われることが一番の集客につながる。
柏谷社長がトランチ事業を始めたきっかけは、オフィス街で昼食を食べる人たちの表情だった。都心は食事をしたり、購入する場所は多いが、いつも同じでは飽きてしまう。そんな時、感動するほどおいしいランチを提供するフードトラックに出会った。当時、柏谷社長はスマートフォンアプリの企画・制作を行うイグニスの取締役を務めていたが、退任してフードトラックで修行を始めた。そして、今は「料理人の人たちが専門の仕事に集中できる環境を作りたい」と柏谷社長は話す。
トランチに出店するフードトラック事業者には、専業で稼ぐ人もいれば、昼はフードトラックで営業し、夜は固定店で営業する人もいる。ある事業者は、固定店では座席数が少ないためランチでの来店者数に限界があったが、フードトラックにするとランチの売上高は4倍になった。さまざまな場所で出店するため、それが宣伝になり、夜の売上高も増加したという。
現在、mellowは大阪と福岡でもトランチを始めようと、デベロッパーと準備を進めている。
空き地シェアの可能性は、フードトラックだけに留まらない。「各都道府県の特産品を販売すれば、都内の一等地にあるアンテナショップのコストを抑えられ、いろんな場所で都道府県のファンを増やせる」(同)という。また、7月には試験的に東京・広尾で車を活用したマッサージ店舗を開いた。ネイルサロンやパーソナルジム、洋服やファッション小物の販売店など、近くに来てくれれば便利な店は多い。
「街の空いているスペースに、移動型の店舗が日替わりでやって来る“空き地シェア”を活用すれば、さまざまな課題を解決できる」と柏谷社長は力説する。来店者は、同じ場所でさまざまなサービスを受けられ、事業者は店舗にかけるコストを抑えながら多様な場所で営業できる。町づくりの新しいアイデアにもなりそうだ。
1店の売上高が44%増加
mellowのフードトラック・プラットフォーム「TLUNCH(トランチ)」は、都内85カ所の空きスペース、フードトラック400店と提携している。利用スペースは、企業のオフィスが入った高層ビル周辺が中心だ。スマートフォン用アプリケーションで、いつどんな店が来るかを紹介。近くで働く人は日替わりで多様なランチを選べる。柏谷社長は「何でもない場所をおいしい場所に変えたい」と話す。
フードトラックは開業にかかる投資を抑えられ、1人でもできることが利点だが、出店場所との交渉やマーケティング、宣伝などを1人で行うのは難しい。そこをトランチが肩代わりする。同社はフードトラックから出店料として売り上げの15%を受け取り、そこから場所の所有者に5%を支払う。契約スペースの増加に伴い、トランチに出店する店舗の月次ランチ売上高は6100万円に増加。1店舗あたりの1日の売上高は前年度比44%増となった。
社内にデータサイエンティスト
成長の裏にあるのは、ICTを使った地道な支援だ。社内のデータサイエンティストらが、過去のデータからどこでどんなメニューが売れたか分析し、場所と店舗をマッチングする。初めてトラックの出る場所も、類似エリアのデータから売れるメニューを予想できる。例えば、「西新橋と日本橋の売れ方は似ている」(同)という。
また、エリアごとに最高と最低、平均の売上高や売上高の推移を見える化し、相対的に自店の売り上げを評価できるようにした。柏谷社長は、「飲食店の成長を妨げるのは『場所のせい』にすること」と指摘する。相対比較ができれば、正しく軌道修正できる。
フードトラック同士のビジネスチャットも運営し、エリア全体の売り上げ拡大も後押ししている。エリアごとに、水たまりなどの出店場所の注意点や何食売れたかなど、次に来る事業者が参考にできる情報を共有している。店舗同士はライバルでもあるが、「こだわりを持つ職人同士は仲がいい」(同)。弁当箱や箸の貸し借りもよくあるという。何より来店者に「この場所で食べればハズレがない」と思われることが一番の集客につながる。
IT企業役員からフードトラック修行へ
柏谷社長がトランチ事業を始めたきっかけは、オフィス街で昼食を食べる人たちの表情だった。都心は食事をしたり、購入する場所は多いが、いつも同じでは飽きてしまう。そんな時、感動するほどおいしいランチを提供するフードトラックに出会った。当時、柏谷社長はスマートフォンアプリの企画・制作を行うイグニスの取締役を務めていたが、退任してフードトラックで修行を始めた。そして、今は「料理人の人たちが専門の仕事に集中できる環境を作りたい」と柏谷社長は話す。
トランチに出店するフードトラック事業者には、専業で稼ぐ人もいれば、昼はフードトラックで営業し、夜は固定店で営業する人もいる。ある事業者は、固定店では座席数が少ないためランチでの来店者数に限界があったが、フードトラックにするとランチの売上高は4倍になった。さまざまな場所で出店するため、それが宣伝になり、夜の売上高も増加したという。
現在、mellowは大阪と福岡でもトランチを始めようと、デベロッパーと準備を進めている。
店がお客に近づく、空き地シェアの可能性
空き地シェアの可能性は、フードトラックだけに留まらない。「各都道府県の特産品を販売すれば、都内の一等地にあるアンテナショップのコストを抑えられ、いろんな場所で都道府県のファンを増やせる」(同)という。また、7月には試験的に東京・広尾で車を活用したマッサージ店舗を開いた。ネイルサロンやパーソナルジム、洋服やファッション小物の販売店など、近くに来てくれれば便利な店は多い。
「街の空いているスペースに、移動型の店舗が日替わりでやって来る“空き地シェア”を活用すれば、さまざまな課題を解決できる」と柏谷社長は力説する。来店者は、同じ場所でさまざまなサービスを受けられ、事業者は店舗にかけるコストを抑えながら多様な場所で営業できる。町づくりの新しいアイデアにもなりそうだ。
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