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加賀市が“消滅可能性”に危機感、IoTで人と企業をつなぎ止め

人と企業を呼び込む好循環狙う
加賀市が“消滅可能性”に危機感、IoTで人と企業をつなぎ止め

プログラミング教育を軸に据える

 石川県の南加賀地方で「消滅可能性都市」の指摘を受けた加賀市。地域の維持発展に危機感を持つ行政は「スマートKAGAラボ(SKL)」を始動。IoT(モノのインターネット)を推進する上で「人材育成」と「地域産業の振興」をテーマに取り組んでいる。

 両方とも「短期的に成果を示すのは難しい」(岡田隆之加賀市イノベーション政策課課長補佐)と指摘。それでも、市民の職場確保に向けて企業流出阻止と誘致を進める。まずは優秀な人材を採用できる環境を整える。

 「人材育成」の大きな特徴は、若年者層に向けた手厚いプログラミング教育だ。2014年にはプログラミングでロボットを操作する「ロボレーブ」の大会を開催。16年には国からモデル地域に指定された。これらの経験がプログラミング教育重視のきっかけになった。20年度からの必修化に先駆けて、17年には市内の全小中学校での実施を実現した。

 産業の振興には大学の力を借りる。連携先の北陸先端科学技術大学院大学の丹康雄教授は、「加賀市の特徴や既存のインフラを生かしている」という。

 地元の特産品である梨の生産にIoT技術を導入。奥谷地区の32万平方メートルに及ぶ広大な梨畑に設置されている約2000本の防蛾灯と電源設備を活用し、電力線通信(PLC)の先端技術の実証実験を行っている。防蛾灯のスマート化で、梨の生産性向上を目指す。同様の実証実験を市の保有施設「かが交流プラザさくら」でも行う。旧市民病院を活用した建屋には、病室向けのテレビ配線が張り巡らされた貴重な実験の場だ。

 同施設には産学官交流拠点の「加賀市イノベーションセンター」を整備した。センター内に3次元(3D)プリンターなどを用意し、市民や企業関係者も利用できる。市内の産業界も「機能充実のため協力していきたい」(宮本善夫加賀機電振興協会常務理事)と歓迎する。
日刊工業新聞 2018年9月26日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
インキュベーションルームも設置し、これから本格的にIoTを核として「人と企業を呼び込む」好循環を生み出していく。 (金沢支局長・本荘昌宏)

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