「人の感じる明るさ」を数値化した省エネ照明は可能か

大林組などが実証。照度ではなく輝度に着目し「光の無駄遣い」を減らす

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ブラインド機能を追加し最適な光環境を実現(神田風源ビル)
 オフィスビルの消費電力のうち、照明は全体の3分の1を占めるとされる。建物の省エネ化では重要な課題の一つだ。最近では室内全体の照明を落とし、卓上部分をタスクライトで照らして消費電力を減らす手法が出てきているが、室内全体が暗い感じになり改善の余地がある。だが、人が感じる明るさに着目した照明設計の技術開発を行うことで、省エネと快適な光環境を両立できる可能性がある。

 大林組は東京工業大学の中村芳樹准教授とビジュアル・テクノロジー研究所(東京都世田谷区)と共同で、人が感じる明るさを基準に室内の光環境を制御する「光環境制御システム」を開発し、実証を行っている。

 同システムは自然光や壁面への照明の反射など、人が明るさを感じる視覚効果を最大限に活用。快適性を維持しながら効率的に照明を制御する。室内全体を照らす照明と比べて消費電力を約60%削減できる。

 特徴はモノに当たる光の量である「照度」ではなく、目に入る光の量である「輝度」に着目していることだ。オフィスの机で作業する場合、室内の明るさは通常700―750ルクス程度に設定されている。だが、机で文書などを読むだけであれば「100ルクスでも十分」(中村准教授)。すなわち、室内を照らす明るさと、実際に人が感じる明るさは一致しておらず「光の無駄遣い」(同)が起きている。

 そこで、同システムでは「人が感じる明るさ感」を数値化する指標「明るさ尺度値」を活用した。明るさの尺度を「非常に暗い」から「非常に明るい」まで13段階に区分。さらに輝度のコントラストを計算することで知覚する明るさを数値化し、画像として示すことができる。

 その結果、少ない光の量でも明るいと知覚できる照明設計が可能になる。明るさ尺度値を開発した中村准教授は「本当の意味での輝度を扱うことができた」と自負する。

 同システムは現在、ブラインド制御機能を追加し、昭和電機東京支店が入居する神田風源ビル(東京・岩本町)で実証している。自然光と室内を輝度カメラで測定し、明るさを評価。ブラインドと照明を制御して消費電力の低減と最適な光環境を実現する。

 今後は、同システムにタスクライトの制御技術も組み合わせ、より消費電力の低減を進める。大林組の小島義包設計本部設備設計部設備設計課副部長は「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を目指すため消費電力を限りなく少なくしたい」と語る。

 ※日刊工業新聞で「技術が生活を変える」を連載中

日刊工業新聞2015年07月23日 建設・エネルギー・生活面

COMMENT

ヨーロッパに行くと室内の照明が我々日本人からすると暗く感じることが多い。彼らはその明るさで生活できているのだから何の問題もないのだが、どの程度の明るさが適当かは“慣れ”と関係しているのではないかと考えたり、人種が違うと目の働きも違うのかなと思ったりする。 それはさておき、今回のこのシステムは、モノに当たる光の量である「照度」ではなく、目に入る光の量である「輝度」に着目して、人が明るさを感じる視覚効果を最大限に活用し、快適性を維持しながら効率的に照明を制御するという。室内全体を照らす照明と比べて消費電力を約60%削減できるとは何とも素晴らしいことではないか。 温暖化ガス削減に関して、誰もが納得する方法は省エネであることは言うまでもない。更なる改良を重ねコスト的な検討も行い、ビルなどへの今後の普及におおいに期待したい

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