新幹線"3分短縮"の裏にJR東海の技術革新
小牧研究施設ルポ
3月に最高速度を時速285キロメートルに上げ、東京―新大阪間の所要時間を約3分間短縮したJR東海の東海道新幹線。都市部や曲線区間が多く、速度向上は難しいとされてきた。速度向上に大きく貢献したのが、2002年に開設した小牧研究施設(愛知県小牧市)での技術開発。3分というわずかな時間短縮の裏には、地道な試験を重ねて安全技術を確立する関係者たちの努力がある。
中央自動車道小牧東インターチェンジを降りてすぐ。JR東海の鉄道技術の「総本山」である小牧研究施設が見えてくる。約73ヘクタールの広大な敷地内には実験用の線や橋などがそろい、約120人の技術者が鉄道技術の開発に取り組む。東海道新幹線の速度向上技術もここから生まれた。
東海道新幹線はJR西日本の山陽新幹線などと比べ急カーブが多く、速度を上げると遠心力が大きくなる。このため、07年にN700系、13年にN700Aの二つの新型車両が登場した後も、山陽新幹線区間は最高時速300キロメートルで運行するが東海道では速度向上が実現しなかった。
この問題を解決したのが小牧研究施設の「車両運動総合シミュレータ」による試験。客室を模した部屋に振動や傾きなどを与え、乗り心地を忠実に再現する。JR東海は同装置を用いた試験で、車体を1度傾ければ、遠心力を適正数値に抑えられることを割り出した。
加えて「新幹線のルームランナー」とも呼ばれる走行試験装置を使い、ブレーキ性能を従来比約15%向上する「中央締結ブレーキディスク」を開発。時速285キロメートルで走行中に地震などで停電しても、同270キロメートルと同程度の距離で物理的に止まれるようにした。
同施設での研究成果は、速度向上以外にも脱線防止装置や橋・トンネルなどの工事技術、新型架線の開発など、枚挙にいとまがない。その多くが、小牧での技術開発に加え、実験車両などを使った数年間に及ぶ検証を経て実用化される。小牧研究施設の責任者の大竹敏雄執行役員技術開発部長は「我々の仕事はフィールド(現場)の状況把握、技術研究、そして(技術の)検証というサイクルの繰り返し」と話す。
もっとも、6月下旬に起きた車内での放火事件を機に防犯対策や排煙対策が指摘されるなど、JR東海は新たな課題にも直面する。同社担当者は、車両などの開発に「完成形はない」と話す。同社にとって、小牧での技術研究は引き続き重要な役割を担いそうだ。
中央自動車道小牧東インターチェンジを降りてすぐ。JR東海の鉄道技術の「総本山」である小牧研究施設が見えてくる。約73ヘクタールの広大な敷地内には実験用の線や橋などがそろい、約120人の技術者が鉄道技術の開発に取り組む。東海道新幹線の速度向上技術もここから生まれた。
東海道新幹線はJR西日本の山陽新幹線などと比べ急カーブが多く、速度を上げると遠心力が大きくなる。このため、07年にN700系、13年にN700Aの二つの新型車両が登場した後も、山陽新幹線区間は最高時速300キロメートルで運行するが東海道では速度向上が実現しなかった。
この問題を解決したのが小牧研究施設の「車両運動総合シミュレータ」による試験。客室を模した部屋に振動や傾きなどを与え、乗り心地を忠実に再現する。JR東海は同装置を用いた試験で、車体を1度傾ければ、遠心力を適正数値に抑えられることを割り出した。
加えて「新幹線のルームランナー」とも呼ばれる走行試験装置を使い、ブレーキ性能を従来比約15%向上する「中央締結ブレーキディスク」を開発。時速285キロメートルで走行中に地震などで停電しても、同270キロメートルと同程度の距離で物理的に止まれるようにした。
同施設での研究成果は、速度向上以外にも脱線防止装置や橋・トンネルなどの工事技術、新型架線の開発など、枚挙にいとまがない。その多くが、小牧での技術開発に加え、実験車両などを使った数年間に及ぶ検証を経て実用化される。小牧研究施設の責任者の大竹敏雄執行役員技術開発部長は「我々の仕事はフィールド(現場)の状況把握、技術研究、そして(技術の)検証というサイクルの繰り返し」と話す。
もっとも、6月下旬に起きた車内での放火事件を機に防犯対策や排煙対策が指摘されるなど、JR東海は新たな課題にも直面する。同社担当者は、車両などの開発に「完成形はない」と話す。同社にとって、小牧での技術研究は引き続き重要な役割を担いそうだ。
日刊工業新聞 2015年07月17日 建設・エネルギー・生活面