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新型「iPhone」読めぬ需要に惑うサプライヤー

「『X』はだめだと言われながら、最近はまた復活している」
新型「iPhone」読めぬ需要に惑うサプライヤー

新型アイフォーンを発表するティム・クックCEO(アップル公式動画より)

 米アップルが発表したスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の最新モデルは、2機種に有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)を採用するなど、大型・高機能化が一層進んだのが特徴だ。ただ、近年は中国メーカーが猛追しており、競争環境はますます激化している。

 アイフォーンには日本のサプライヤーが多くの部材・パーツを供給している。ただ、今回の新機種には特に目新しい搭載機能がなく、事前の期待値を大きく超えるものではなかった。このため、新機種の投入効果を素直に期待できるのか複雑な状況だ。

 村田製作所は、スマホに必要不可欠な電子部品「積層セラミックコンデンサー(MLCC)」の増産投資を加速している。電装化が進む車向けの需要も急激に高まり、工場は現状、「フルフルの稼働」(竹村善人取締役)。車載向けにかじを切る企業が多い中、スマホと車載の両市場をターゲットにMLCCの増産で、19年度末までに1000億円程度を投じる方針だ。

 ただ、新型アイフォーンに対する部品メーカーの期待感は複雑だ。前モデルの「X」の販売が予想より振るわなかったからだ。ある電子部品メーカー幹部は「『X』向け製品の量産が一時、停止した」と打ち明ける。

 工場も実質的に操業停止になったという。ただ、「X」の不調が異常だったとし、「この冬以降はそんなに悪くはないだろう」と楽観視する。

 別のメーカー幹部は、新型アイフォーンが業績に与える影響について、「正直不透明な部分がある」とした上で、「『X』はだめだと言われながら、最近はまた復活している」と指摘し、需要見通しが難しいことを吐露する。

 一方、ディスプレーの供給業者も変更があった模様だ。「X」はサムスンが独占供給していたが、今回韓国LGディスプレーも加わった。

 有機ELパネルは「X」の部品の中では最も高く、原価の約4分の1程度を占める。アップルは調達先を増やすことでサムスン依存を減らし、価格交渉を有利に進める体制を整えた。

 アップルのみならずファーウェイやソニーもスマホでの有機ELシフトを敷く。LGはソニーにもパネルを供給すると見られている。有機ELパネルは価格面でも機能面でも核になる部品だけに、サプライヤー間の競争が今後も激しくなりそうだ。

アナリストはこうみる


●楽天証券経済研究所チーフアナリスト・今中能夫氏
 新モデルで電子部品メーカーなど日本のサプライヤーが注視すべきことは主に3点。まず3機種の販売数量比率だ。アイフォーンの平均出荷単価はかつて600ドル台だったが、現在は700ドル台。価格帯を低めに抑えた「XR」の販売比率が最も高くなると思うが、これがどの程度になるかで平均出荷単価が変わる。平均出荷単価が上がれば、電子部品メーカーは高価格帯の部品を供給できる。

 二つ目は全体の販売数量だ。ここ数年は横ばいがトレンド。その代わり平均出荷単価が上がった。そのけん引が「X」。圧倒的な高値で売れている。この価格帯が消費者に受け入れられ続けるのか。

 最後は価格設定をどう見るか。デュアルカメラの「Xs Max」よりシングルカメラの「XR」の方が売れれば、これはカメラ回りを手がける電子部品メーカーにとってはマイナスになるだろう。
                  
日刊工業新聞2018年9月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 ここ数年は出荷台数ベースで韓国サムスン電子に首位の座を奪われ、年間2位に甘んじるアップル。だが、足元をみれば3位以下の中国勢の台頭がめざましく、2位の地位すら危うい。米IDCがまとめた18年4―6月期の世界スマホ出荷台数によると、アップルのシェアは約12%の4130万台となり、3位に転落した。アップルを抜いて2位に浮上したのが、中国の華為技術(ファーウェイ)。同社は約15%を占め、出荷台数は5420万台と前年同期から約40%も増加した。  スマホ市場全体が縮小する中、ファーウェイは台数ベースで伸びが期待できる新興国を中心に、低価格のスマホで販売攻勢をかけたことが寄与。最上位の「HUAWEI P20 PRO」にはトリプルカメラを初めてスマホに搭載するなど、近年は高機能モデルでも攻勢をかける。ファーウェイの幹部は「19年にも世界首位を狙う」と豪語するなど、追撃の矛先はすでにサムスンに向かう。そのサムスンも今年発売した「ギャラクシーS9」が販売苦戦を強いられるなど、決して順調とはいえない。ライバルの足踏みを尻目に、ファーウェイの躍進が続けば、19年にも市場の勢力図が変わりそうだ。 (特別取材班)

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