JR東が駅から街へ、秋田駅から始まるコンパクトシティーの挑戦

県や市と危機感共有

 JR東日本が秋田駅を核としたコンパクトシティーの構築に取り組んでいる。地元自治体の協力を得て駅周辺の自社用地に民間事業者を誘致し、にぎわいの創出で地域活性化につなげる構想だ。駅は街の玄関口であり、交流拠点形成の潜在力は高い。JR東は地域との協働を通じて、自らが街づくりの担い手になれることに目覚め始めた。

 JR東日本は秋田駅周辺で、県、市とともにコンパクトシティー推進プロジェクト「ノーザンステーションゲート秋田」を進めている。秋田県は人口減少率が5年連続で全国最高を記録。危機感を共有する3者は2015年9月、連携協定を締結し、地域活性化に貢献する新たな街づくり策を検討してきた。

 17年3月には秋田新幹線「こまち」の運転開始20年を記念して、駅コンコースをリニューアル。観光案内所や待合室も新装して機能を強化し、秋田産材をふんだんに使って木質空間を演出した。「家のリビングのように」(JR東日本秋田支社地域活性化推進室)とコンセプトを掲げて公共空間に、いすや机を配置。今では駅が、市民の憩いの場として日常に溶け込んでいる。

 駅西口には立体駐車場を併設し、自家用車との交通結節機能を高めた。さらには支社社屋の改築に伴い、駅前広場に面した一等地を捻出。にぎわい創出を期待して地元放送局を誘致し、工事が進む。

 一方、駅東口では健康・スポーツをテーマに3世代が元気に暮らせる「プラチナタウン計画」が本格化する。スポーツクリニックに続き、地元で盛んなバスケットボールの練習施設「JR秋田ゲートアリーナ」を着工し、子育て支援機能も併設する。学生寮兼合宿所の計画も進めている。

 従来の駅周辺再開発と異なるのは、すべてがJR東の自社用地という点だ。地方では優等列車が減り、長大編成は姿を消した。貨物列車も駅での荷下ろしが減り、駅機能を満たすのに、広い敷地は必要なくなっている。

 プロジェクトの根幹は「JRの土地を使いつつ、他事業者に投資してもらう」(地域活性化推進室)ことだ。構想に共感し、立地に魅力を感じた商業や金融、医療など他事業者の参画によって、駅周辺は姿を変え始めた。

 駅周辺の魅力向上が近隣地区のマンション開発も誘引しているという。「駅周辺の街づくりが、街中に広がっている」(地域活性化推進室)と、好感触を得ている。地方での駅周辺開発は、JR東にとって初めての経験だ。同社が目指す“駅ナカ”から“街ナカ”への事業領域拡大は大都市に限らず、地方都市でも可能性が開けつつある。

(2018年9月7日)

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
09月08日
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地方での駅周辺開発は、JR東にとって初めての経験だ。同社が目指す“駅ナカ”から“街ナカ”への事業領域拡大は大都市に限らず、地方都市でも可能性が開けつつある。(小林広幸)

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