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脱エンジン依存急ぐ日特陶、VB連携で問うたった二つの条件

スピード重視で新事業開拓
脱エンジン依存急ぐ日特陶、VB連携で問うたった二つの条件

出資先の米ニューラル・アナリティクスの脳内血流検査装置

 日本特殊陶業が新規事業の開拓を加速している。4月、提携先の新興企業の発掘拠点を米シリコンバレーに開設。同時に、5億円以下の投資は取締役会を経ず担当役員が決断できる規定も設けた。すでに創業間もないスタートアップ期のベンチャー企業2社に計5億5000万円を出資。今後、年間に10社程度へ同様の出資を続ける方針だ。

 新拠点「イノベーションセンター」は米国法人の技術開発のエースだった責任者を含め10人の専任を置く。米国法人に間借りするが、実質は日特陶の新事業開拓本部だ。「提携案件が日本より圧倒的に面白くて多い」と大川哲平副社長は感じている。相手からの売り込みも増え、現在も数件の提携案件を検討中だ。

 4月には投資第1号として米ナノラミックラボラトリーズに2億2000万円を出資した。マサチューセッツ工科大学発ベンチャーで、蓄電容量が大きく燃料電池などへの搭載が期待される電気二重層キャパシター(ウルトラキャパシター)を開発している。製品は表面実装によるチップ型で「量産に当社のパッケージ技術が生かせる」(大川副社長)のも魅力だ。

 さらに5月には、超音波による脳内血流検査装置を開発する米ニューラル・アナリティクスに3億3000万円を出資している。手動式の同装置は米国食品医薬品局から製造認可を取得済み。本命の全自動式も開発中で、日特陶製の超音波振動子の採用も検討している。

 日特陶の売上高はエンジンの点火プラグや関連センサーが8割以上。電気自動車(EV)の普及を前に“脱エンジン依存”が急務だ。セラミックス製人工骨、燃料電池など、長年新規事業に取り組んでいるが、成果は小さかった。

 そこで自前主義は捨て、代わりに創業間もないスタートアップ企業と連携し、スピードを持って新規事業を育てる戦略だ。同社の新規事業のテーマは、次世代自動車、環境・エネルギー、医療の三つ。だが「提携案件でスタッフに問うのは『面白いか』と『なぜ当社とか』の2点のみ」(同)という。「10社と組んで1社当たるかどうか。当面は小さく早く失敗し経験を積む。2、3億円の出資を年に10件ぐらいしたい」(同)と青写真を描く。

(2018年9月5日)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「新規事業はプロセス、ピープル、プレースの3Pが重要という。場所を変えれば人も過程も変わると考えた」(大川副社長)と説明する。(名古屋編集委員・村国哲也)

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