アインシュタインの宿題、重力波をつかまえる2億円サファイアの役割

重力波望遠鏡「KAGRA」の準備着々

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かぐらに設置するサファイア製の鏡
 東京大学宇宙線研究所を中心に国内外70機関が参加し、神岡鉱山(岐阜県飛騨市)の地下に建設した重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」の準備が着々と進んでいる。東大はかぐらの最重要構成要素の一つであるサファイア製の鏡4基を完成させた。重力波研究で先行する欧米のグループとともに国際観測プロジェクトに参加する。光や電波などで観測できなかった新しい宇宙物理学の世界が開かれようとしている。

 ブラックホールなどの巨大質量を持つ天体が動くと時空(時間と空間)が歪(ひず)み、重力波となって伝わる。重力波望遠鏡はその時空の歪みによる重力波を観測するための装置だ。ブラックホールの誕生の瞬間の現象や銀河の成長の解明などにつながると期待される。

 重力波は2015年に米重力波望遠鏡「LIGO(ライゴ)」で初めて発見され、米大学の研究者が17年のノーベル物理学賞を受賞した。かぐらの始動で日本はライゴや欧重力波望遠鏡「VIRGO(バーゴ)」の研究グループとともに国際ネットワークに参加する。

 重力波の検出はレーザーや鏡、光検出器などで構成される装置「干渉型重力波検出器」を使う。装置に重力波が飛んでくると鏡と鏡の間にわずかな距離の差が生じ、その差を光として検出することで重力波の証拠となる。かぐらの装置内にはレーザー光を何百回も反射させる光共振器として4基の鏡を使う。

 だがこのわずかな距離の差は水素原子の大きさよりさらに10億分の1程度となる。このような微小な差の検出には、鏡の分子の熱雑音(ノイズ)が邪魔になる。そこで鏡自体を冷やし、熱運動を小さくして観測精度を高める手法を選んだ。鏡の材料には「熱を伝えやすく、低温時の鏡の熱の揺らぎが小さいサファイアの単結晶を選んだ」(サファイア鏡の開発に携わった廣瀬栄一同研究所特任助教)。かぐら運転時にはマイナス253度Cで運転する。鏡を冷やし重力波を観測する手法は日本独自のもので、この手法はライゴにも組み込む予定だ。

 サファイア鏡は直径22センチメートル、厚さ15センチメートル、重さ23キログラム。国内外のメーカーの協力でサファイア原石を研磨、酸化化合物による被膜、評価という過程を経て完成させた。鏡の製作費は4基で2億円程度とみられる。

 同研究所の大橋正健重力波観測研究施設長は「サファイアを使った低温の鏡を使った測定は重要な技術となる。ライゴやバーゴなどをしのぐ性能にしていきたい」と将来の展望を見据える。

 サファイア鏡は今秋にもかぐらの低温真空容器内に設置する。調整を経て、19年10月にも観測を始めたい考えだ。国際共同での重力波天文学の発展が期待される。

(2018年8月28日)

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15年にニュートリノ振動の発見でノーベル賞を受賞した梶田隆章東大宇宙線研究所所長がかぐらプロジェクトの代表を務める。(冨井哲雄)

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