買い物難民をなくせ! 自動車部品と薬局が異色タッグのワケ

アイシン精機とスギ薬局

 アイシン精機とスギ薬局が、7月下旬から乗り合い車両を地域住民の“足”として使ってもらうサービスの実証実験を愛知県内で行っている。年内に実証を完了し、2019年からは有料での事業化を目指す。少子高齢化を背景に各地で商店街や公共交通の衰退が進む中、高齢者の“買い物難民化”を防ごうと異業種が手を組む格好だ。

 7月24日、愛知県豊明市役所を1台のバンが出発した。車両には「チョイソコ」のサービス名が表示されている。12月までの5カ月間にわたる乗り合いサービスの実験が始まった。

 実験は豊明市仙人塚地区の住民を対象に実施。同地区は坂が多く、車を持たない人が買い物や病院に出かけるには負担が大きい。事前登録した利用者が電話予約すると、自宅付近のゴミ収集所などを起点に、病院やスーパーマーケット、薬局など28カ所の停留所に行ける。実験期間中の利用は無料で、サービス開始までに約80人が登録したという。

 今回、異業種が手を組む背景には高齢化への危機感がある。「買い物難民の増加を実感している」。愛知県大府市に本社を置くスギ薬局の杉浦克典社長はこう話す。同社は中部地域を中心に全国で約1100店舗を運営。店舗で扱う商品も処方薬から日用品まで幅広く「地域の方に通っていただける身近な存在」(杉浦社長)なだけに、移動手段を持たない人の増加は経営にも影響する問題だ。乗り合い送迎サービスによって移動手段を確保し、自社の店舗にも足を運んでもらうことを狙う。

 一方のアイシン精機はグループで長年培ってきたカーナビゲーション技術などを生かし、効率的に配車するシステムを構築する。伊勢清貴社長は「高齢化対応は待ったなし。自動車産業に身を置く者として貢献したい」と話す。

 豊明市もこの取り組みに協力する。同市は人口7万人弱。高齢化率は25・4%と全国の自治体の中でも平均的な水準にある。小浮正典豊明市長は「地域交通を従来通り維持することは難しくなっている」とした上で、「(高齢者の移動手段確保という)同じ悩みを抱える自治体は多い」と実験の意義を語る。

 実験はまず8人乗りのバン1台で実施中だが、事業化に向けてはタクシー会社との協業も検討する。事業化後も1回200―300円程度で利用できるようにするという。スギ薬局の杉浦社長は「豊明市と同じニーズを持つ自治体は多く、できるだけ早く水平展開したい」と意気込む。

乗り合い送迎サービス「チョイソコ」の停留所

(2018年8月24日)

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
08月25日
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海外では、都市部を中心に相乗り(ライドシェア)サービスや配車アプリといった移動手段の提供者が存在感を高めている。一方、国内では、ライドシェアは“白タク”として原則禁止されているほか、過疎地などでは利用者の少なさから配車サービスの採算も取りにくいとされる。こうした中、アイシン精機とスギ薬局は効率的な配車サービスの構築を通じ、新たな移動サービスの収益化を目指す。

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