【伝統工芸×伝統工芸】各産地からコラボ求める声

大阪錫器

 大阪錫器(すずき)(大阪市東住吉区、今井達昌社長、06・6628・6731)は、経済産業大臣指定の伝統的工芸品「大阪浪華(なにわ)錫器」で、ぐい呑(の)みやタンブラーなどの和洋酒器、花器、神仏具などを手がける。伝統工芸品の世界で顔が広い今井社長は、2012年頃に漆の産地とコラボレーションした錫器「錫漆(すずうるし)」を商品化。現在は月に10―20個売れている。今井社長は「利益はあまりない」と話すが、伝統工芸品が抱える商品開発の課題解決に一役買う。

 「何かしようか」。商品開発のはじまりは今から8年ほど前。交流のあった輪島塗伝統工芸士会前会長の津田哲司さんと酒席で、錫器に漆を塗った商品を作ろうと盛り上がったのがきっかけだった。

 錫器は溶かしたスズを型に流し固まったスズを刃物で削り、絵付けを行う。錫漆の開発で今井社長が苦労したのが、錫器に豊かな風合いを出すために、酸でスズ表面を浸食させて凹凸を作る「くさらし」という工程だ。凹凸で漆が錫器から剥がれにくい反面、凹凸が大きいと漆特有の光沢感が失われる。

 今井社長はくさらしの最適な加工方法を探った。津田さんも錫器で絵柄がはっきり見える方法を考え、構想から約1年かけて錫漆は完成。おしどりや海産物を蒔絵(まきえ)で描いたぐい呑みなどを発売した。その後、津軽、会津、越前、紀州といった各産地から、コラボを求める声が相次いだ。現在は5地域で作り手の特長を生かした、錫漆を約100種類、展開している。

 漆を用いた商品開発は、漆器の原木を乾燥させる工程に時間がかかり、製品一つ作るのに5年かかるとされる。錫器は乾燥が不要で、半年あれば商品が作れる。今井社長は「錫漆なら流行に合った商品が作れるため、各産地とも挑戦したいのでは」と強調する。今後もコラボを望む産地を受け入れる考えだ。

 今井社長の持論は「今までと同じなら伝統工芸はすたれる」。伝統工芸品の新たな姿を常に模索している。

型から取りだした鋳造品を見つめる大阪錫器の今井社長

(2018年8月24日)

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
08月25日
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錫器は約1300年前に中国から日本に伝わり、大阪で錫器の生産がはじまったのは江戸時代後期。今井社長によると大阪府内で錫器を手がけるのは、昭和初期に30―50事業者ほどあったとされるが、戦時中の混乱や職人の高齢化などで減少。現在、大阪の錫器事業協同組合に加盟するのは大阪錫器を含め4事業者という。

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