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“モディ首相に最も近い日本人”が見た本当のインド経済

商工省ジャパン・プラスの豊福氏「8億人の農民が成長ドライバーになる」
“モディ首相に最も近い日本人”が見た本当のインド経済

豊福氏

 インドで日本企業のお助けマンがいる。商工省内に2014年秋に設置された日系企業専用の投資相談窓口「ジャパン・プラス」でコーディネーターを務める豊福健一朗氏。同窓口は昨年9月の安倍晋三首相とインドのモディ首相との首脳会議で創設が決まった。発足当初から現場で働く豊福氏は、“モディ首相に最も近い日本人”とも言われる。躍動するインド経済の今を聞いた。

 ―インドは成長しているという漠然としたイメージはあります。何が原動力ですか。
 「人口の3分の2を占める8億人の農民だ。かつては閉ざされた空間に住んでいたが、バイクの普及で100キロメートル先のショッピングセンターまで行けるようになった。一家の長男たちはそこで働き、月に1万円ぐらいの現金収入を得ている。それで1000円ぐらいの携帯電話を買い、都市で何が売れているのかという情報に接している。この8億人が消費活動に参加するインパクトは巨大だ。日本ではあまり知られていないが、都市よりも農村の変化がはるかに大きく、今後のインド経済の成長ドライバーになる」

 ―昨年年5月にインド人民党(BJP)のモディ政権が誕生して以降、積極的な外交姿勢で世界におけるインドのプレゼンスが急上昇しています。現地にいて何がこれまでと一番変わったと感じますか。
 「選挙でBJPは実に30年ぶりに単独過半数を握った。ここが一番のポイントだ。これまでの政権は連立の維持に大半の精力を注いでいた。モディ首相はその必要がなく、政策立案や外交にも時間を割ける。各省庁の役人は大臣ではなく、モディ首相に直接説明に出向いているため、これまでより緊張感を持っている。そこが一番変わったところだろう」

 モディ首相が製造業で一番手本にしているのは日本

 ―モディ首相は前職のグジャラート州首相時代に、スズキホンダなど日系企業を誘致したことで知られています。豊福さんは州首相時代から付き合いがありますが、モディさんの日本企業に対するイメージは。
 「スズキやホンダの誘致に成功した後、日本の部品メーカーはこぞってグジャラート州を視察に訪れた。モディ首相はほぼ毎日、日本企業に対応していた。この経験から、首相は日本の製造業のすごさを目の当たりにしている。つまりボリュームが他の国と違う、産業の裾野が広いと。首相は『メーク・イン・インディア(インドでモノづくりを)』と発信しているが、製造業で一番手本にしたいのは日本だと感じる」

 ―インドでモノづくりをする際、労働ストが課題の一つです。最近の状況は。
 「州ごとの政治情勢により状況は異なる。労働組合は票田となっており、組合が支持する政党が州政府の与党となっている場合、ストは活発になりがちだ。つまり州政府がストを抑えられない。もっとも、過去に日系企業の事例をみると、短期間に工場を拡張している企業でストが起きている。急に新しい人材を大量に採用して労務管理がおろそかになったからだ。計画的な人材採用などで、ある程度、ストは防げる」

 ―インドは日本の8・7倍の国土を持ち、インフラ需要も膨大です。中でも日本企業は新幹線の導入に期待を寄せています。
 「採算性がとれるかどうかが最大のポイントだ。インド人は長距離移動で鉄道をよく利用する。国有鉄道会社の料金はものすごく安く、首都デリーから西部の商都ムンバイまでの1000円前後しかかからない。日本なら東京から鹿児島ぐらいの距離だ。現段階でどのぐらいのインド人が高価な新幹線に乗れるのか不明だ。ただ、経済発展とともに、どこかのタイミングで(高速鉄道は)必要になるだろう。後は時期の問題だ」
 (聞き手=大城麻木乃)

 <プロフィール>
 豊福健一朗(とよふく・けんいちろう)
 1993年(平5)慶大経卒。同年通商産業省(現経済産業省)入省。2004年在インド日本大使館一等書記官、10年日本貿易振興機構ニューデリー事務所次長。14年10月より現職。秋田県出身、45歳。学生時代は野球一筋で、高校時代はエースとして活躍する。経産省入省後も毎年インドを旅をし、インドのテレビ番組にヨガインストラクターとして出演した経験も。インド式ベジタリアン。
日刊工業新聞2015年07年21日の記事に大幅加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
モディ政権の中のキーアドバイザーは、米国の金融資本主義に距離を保とうとしている人たちが多いという。BJP幹部も金融系より実業家や起業家とつながりが深い。企業のあり方については、日本やドイツを参考をしている経営者もかなりいる。ただ、ウォールストリートからの圧力もかなりあるようだ。海外からの投資を促進する『モディノミックス』は、どちらの方に軸足を置くのかまだ分からない。

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