コマツの“泥臭いIoT”がスマートに変わる時

「コンシューマーの世界で起きたことが世の中全体を覆う」(黒本常務)

 「IoT(モノのインターネット)という言葉には宙に浮いたイメージがあるが、実際は泥臭いもの。コマツもそうした社風だからIoTの活用にマッチした」―。コマツ常務執行役員の黒本和憲は、自社の情報通信技術(ICT)活用が成果を上げている理由をこう説明する。

 【無人運行】
 2001年に搭載を始めた建設機械の稼働管理システム「コムトラックス」を駆使し、最適な時期の部品交換や修理などサービスの付加価値を高めてきた。「モノづくりを中心にしつつ、サービス部分でより差別化を図ってきた」(黒本)。

 黒本はICT戦略を統括する立場にある。設計者出身で、巨大鉱山で稼働するダンプトラックの無人運行システム開発に携わった。90年に開発に着手し、08年に世界で初めて実用化した。

 「工場に比べて難しい鉱山のルール化を果たせた」と意義を説く。明確なルールを基に運行するため、有人のダンプを含めて生産性が高まる。実現の背景には、コマツが顧客の現場の悩みや課題を理解していたことがある。黒本は無人運行システムを「顧客が望んだのではなく、我々から提案した」と強調する。顧客の要望を先取りし、必要となるサービスを生み出した。

 【人手不足解消、あり方一変】
 それは建設現場全体を見据えた新事業「スマートコンストラクション」にも反映されている。施工を自動化する建機を軸に、飛行ロボット(ドローン)などを用いた3次元測量や施工計画シミュレーションとICTを駆使し、施工の前工程まで請け負う。「熟練作業者がいなくても工事の効率を高められる。人手不足解消につながる」(黒本)。

 誰もがスマートフォンを持つ時代が到来した。黒本は「コンシューマーの世界で起きたことが世の中全体を覆う。土木の世界でもIoTをより活用するようになる」と見通す。

 IoTの普及は製造業のあり方を変えることになる。「製造業が一段上のレベルになる。工業化されたサービスに近づく」(黒本)。コマツはまさにその方向性を目指してきた。ICTソリューション本部はICT活用をサービスに落とし込むのが役割で、実行部隊といえる。

 黒本はダンプトラックの無人運行システムの開発中、何カ月も顧客の現場に行き、要望を正しく把握するよう努めた。顧客を驚かせ、満足させるサービスを実現してきた陰には、そうした地道な取り組みの積み重ねがある。コマツのICT戦略の出発点には、顧客への深い理解がある。
(敬称略)
 
 ※日刊工業新聞では現在、「モノづくり革新・新たな挑戦」を連載中。
 

日刊工業新聞2015年07月14日 1面

明 豊

明 豊
07月18日
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IoTは次に人工知能と機械学習の技術展開に突入するだろう。日本の製造業を見渡しても、そこの先頭集団に立つのは間違いなくコマツになる。

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