ひらめく会議はPDCAの逆を行け!価値を生む共感づくりの方法
変化の時代のコミュニケーション力①
ビジネスの場で、かつてないほど「コミュニケーション能力」が求められている。多様な人材がアイデアを出し合い、新しい価値を生み出すためだ。変化の時代に何かを創り出すコミュニケ-ションを探る。
企業内の主要なコミュニケーションの一つは会議だが、良いアイデアが浮かばず、話が停滞することもしばしばある。富士ゼロックス研究技術開発本部コミュニケーション技術研究所の河野克典グループ長はひらめきには、「PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルの“逆”が必要だ」と主張する。
左脳を働かせると言われるPDCAはリスクを最小化する手法としては優れるが、アイデアは可能性を広げて考えるほうがいい。「直感や他者とつながるとされる右脳が活発化すれば『集団でひらめく』」。
同社は理論だけでなく、東日本大震災からの復興のアイデアを住民や行政、企業といった異なる立場の人が考える「対話会」で実践している。具体的には、PDCAのスタートであるプラン(計画)を立てずに、人脈づくりから始める。役職や立場から離れた個人として、損得抜きで人とつながる。その状態で、周りの人が何をしたいか聞く。すると、お互いに共通した「大事なこと」に気づきやすくなる。
さらに話を聞く時は意見をぶつけず、「相手の対象への向き合い方を見る」と河野グループ長は話す。例えば戦国武将が好んだ茶の湯が好例だとか。正面に座らず、所作や一輪挿し、茶の湯への姿勢から、立場を離れて信頼できる人間かを感じとる。戦国時代に茶の席で和解が成立できたのもこのためだ。
拡大インタビュー「最初の一言で、会議にチームワークのスイッチを入れる簡単な方法」
コミュニケーションの活発化は、「どんな場所で働くか」という外側からもできる。コクヨワークスタイル研究所の若原強所長は、「組織を強くするために、偶発的なコミュニケーションを活発化するオフィスが注目されている」と指摘する。普段の何げない会話から、誰が何に詳しいかなどの情報を共有しておけば、新プロジェクトを始めたい時などにも最適なメンバーがすぐに見つかるからだ。
喫煙所で顔を合わせて、「最近どう?」と話すようなことを、喫煙所以外でも実現する。例えば、仕事や打ち合わせ、休憩など多目的に使えるスペースを、執務場所からトイレに行く途中の動線に配置すると人が集まる。また、執務場所の机をジグザグに配置すれば、歩く距離が延びて会話が生まれやすい。
また、新しい価値を生み出すには、「組織力学からの適切な脱出と、社外との適切な接点が必要だ」とも。他部署や他社の人と気軽に交流し、多くの「想定外」を得る。このため、外に開かれた場を社内に設置する企業が増えつつある。
拡大インタビュー「ヒントはグーグルの社食?未来のオフィスは『求心力』で進化する」
コミュ力を求められても、自信のない人は少なくない。伝えるプロであるスピーチライターの蔭山洋介氏は、「社会的なコンセンサス(合意)が揺らぎ、昔に比べコミュニケーションの難易度が上がっている」と分析する。人生の成功モデルも変わり、「好きな事で生きる」ことが推奨されるようになった。だが、強く好きと思えるものを持つ人は少ない。目標がないと、自信を持ったコミュニケーションが難しい。
コミュ力を磨くために、「自分のブランディングから始めてみてほしい」と蔭山氏は提案する。今と未来の成長した自分をイメージし、好きなバッグや洋服、家具などを一つずつ選ぶ。意識的に好きなものを探し、自分の方向性を決める。周りの人からも見られるため、退路を断つことにもなる。
自分の世界観がはっきりすれば、それがコミュニケーションの土台になる。「人間はわかり合いたい生き物。コミュニケーションの基本は、子どもが好きなものを『見てみて』というのと同じ」と蔭山氏。自信を持って好きなものを発信するのは、共感を得る第一歩。セルフブランディングできる人は、新しい価値をつくりやすい。
拡大インタビュー「スピーチライターが教える、相手に響く話のためのコミュ力トレーニング」
将来、会社や個人の関係が変われば、コミュニケーションのあり方も変わる。時代や周囲の変化をつかまえ続けられれば、コミュ力も磨かれる。
停滞しない会議のコツ
企業内の主要なコミュニケーションの一つは会議だが、良いアイデアが浮かばず、話が停滞することもしばしばある。富士ゼロックス研究技術開発本部コミュニケーション技術研究所の河野克典グループ長はひらめきには、「PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルの“逆”が必要だ」と主張する。
左脳を働かせると言われるPDCAはリスクを最小化する手法としては優れるが、アイデアは可能性を広げて考えるほうがいい。「直感や他者とつながるとされる右脳が活発化すれば『集団でひらめく』」。
同社は理論だけでなく、東日本大震災からの復興のアイデアを住民や行政、企業といった異なる立場の人が考える「対話会」で実践している。具体的には、PDCAのスタートであるプラン(計画)を立てずに、人脈づくりから始める。役職や立場から離れた個人として、損得抜きで人とつながる。その状態で、周りの人が何をしたいか聞く。すると、お互いに共通した「大事なこと」に気づきやすくなる。
さらに話を聞く時は意見をぶつけず、「相手の対象への向き合い方を見る」と河野グループ長は話す。例えば戦国武将が好んだ茶の湯が好例だとか。正面に座らず、所作や一輪挿し、茶の湯への姿勢から、立場を離れて信頼できる人間かを感じとる。戦国時代に茶の席で和解が成立できたのもこのためだ。
拡大インタビュー「最初の一言で、会議にチームワークのスイッチを入れる簡単な方法」
外側から活発化できる
コミュニケーションの活発化は、「どんな場所で働くか」という外側からもできる。コクヨワークスタイル研究所の若原強所長は、「組織を強くするために、偶発的なコミュニケーションを活発化するオフィスが注目されている」と指摘する。普段の何げない会話から、誰が何に詳しいかなどの情報を共有しておけば、新プロジェクトを始めたい時などにも最適なメンバーがすぐに見つかるからだ。
喫煙所で顔を合わせて、「最近どう?」と話すようなことを、喫煙所以外でも実現する。例えば、仕事や打ち合わせ、休憩など多目的に使えるスペースを、執務場所からトイレに行く途中の動線に配置すると人が集まる。また、執務場所の机をジグザグに配置すれば、歩く距離が延びて会話が生まれやすい。
また、新しい価値を生み出すには、「組織力学からの適切な脱出と、社外との適切な接点が必要だ」とも。他部署や他社の人と気軽に交流し、多くの「想定外」を得る。このため、外に開かれた場を社内に設置する企業が増えつつある。
拡大インタビュー「ヒントはグーグルの社食?未来のオフィスは『求心力』で進化する」
自分の「好き」づくりが共感の第一歩
コミュ力を求められても、自信のない人は少なくない。伝えるプロであるスピーチライターの蔭山洋介氏は、「社会的なコンセンサス(合意)が揺らぎ、昔に比べコミュニケーションの難易度が上がっている」と分析する。人生の成功モデルも変わり、「好きな事で生きる」ことが推奨されるようになった。だが、強く好きと思えるものを持つ人は少ない。目標がないと、自信を持ったコミュニケーションが難しい。
コミュ力を磨くために、「自分のブランディングから始めてみてほしい」と蔭山氏は提案する。今と未来の成長した自分をイメージし、好きなバッグや洋服、家具などを一つずつ選ぶ。意識的に好きなものを探し、自分の方向性を決める。周りの人からも見られるため、退路を断つことにもなる。
自分の世界観がはっきりすれば、それがコミュニケーションの土台になる。「人間はわかり合いたい生き物。コミュニケーションの基本は、子どもが好きなものを『見てみて』というのと同じ」と蔭山氏。自信を持って好きなものを発信するのは、共感を得る第一歩。セルフブランディングできる人は、新しい価値をつくりやすい。
拡大インタビュー「スピーチライターが教える、相手に響く話のためのコミュ力トレーニング」
将来、会社や個人の関係が変われば、コミュニケーションのあり方も変わる。時代や周囲の変化をつかまえ続けられれば、コミュ力も磨かれる。
(2018年8月3日)