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急速な社会変化と損保業界の関係

日本損害保険協会・西沢敬二会長(損保ジャパン日本興亜社長)に聞く
 日本損害保険協会会長に損保ジャパン日本興亜社長の西沢敬二氏が就任した。協会は2017年5月に創立100周年を迎え、4月からは環境変化に迅速に対応することなどを柱に据えた第8次中期基本計画(18―20年度)を始めた。損保業界は今、少子高齢化の進展や自然災害の増加、自動運転や人工知能(AI)の技術革新など社会環境の急速な変化にさらされている。これにいかに対応し、新たな損保業界を形作るのか。西沢新会長に展開を聞いた。

 ―業界を取り巻く経済や社会環境は。
 「世界経済は着実に成長している。ただ、欧米では段階的な金融政策の引き締めで一部の国で弱さが顕在化し、世界経済を減速させる懸念がある。日本経済も緩やかに成長する一方、中長期的には少子高齢化で社会保障費の増加や活力低下などが予想される。ただ、この課題の克服のために技術革新や社会制度の見直しが期待され、日本の未来を開く好機と捉えている」

 ―第8次中期基本計画が始まりました。
 「環境変化への対応に加え、顧客視点の業務運営、強固で安定的な保険制度の確立、国際保険市場でのさらなる役割発揮を計画の柱に据えた。これを推進するため初年度は、国連の『持続可能な開発目標(SDGs)』の達成と『ソサエティー5・0』の実現に貢献するという観点から具体的な課題解決を進める」

 ―大規模地震にどのように対応しますか。
 「まず、経済的な備えとなる地震保険の普及に引き続き努めたい。また、大規模な震災の際は損保各社が集まって共同で査定する仕組みを導入したい。被災地では生活再建のためにお金を必要とする人が多くいる。査定の簡素化なども検討し、地震保険金の迅速な支払いに向けた態勢を強化する」

 ―技術革新が続いています。
 「自動運転は業界全体が注視しており、自動車保険のあり方に大きく関わる変革だと捉えている。安心で安全な自動運転の実現に向け、業界の役割を果たしたい。また、ITの進展で、サイバーリスクも顕在化してきた。個人や企業の経済活動を支えるためにも、この新たなリスクへの対応力を向上させないとならない」
西沢敬二会長

日刊工業新聞2018年7月4日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
大規模地震のリスクが高まる中、迅速な保険金の支払いに直結する共同査定の導入が必要だ。共同査定は効率良く人員を配置できるため、物資などが乏しくなる震災時に有効な査定手段だ。震災時にどのような形で顧客情報を業界全体で共有できるかなど、協会主導の早急な議論が求められている。 (日刊工業新聞・小野里裕一)

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