ispace、中小企業社長に直筆手紙100通の理由

量産試作はモノづくり系ベンチャーの死の谷

 今人気のベンチャー企業も、事業立ち上げ時にはさまざまな苦労があった―。宇宙関連のベンチャー企業のispace(東京都港区)の中村貴裕取締役兼最高執行責任者(COO)は、「部品調達先を探すために、中小企業の社長に直筆の手紙を100通書いた」と語った。モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)が開いた「ロボット研究会セミナー」で、事業立ち上げ時を振り返った。

 モノづくり系ベンチャー企業にとって、量産試作や量産設計は「死の谷」と言われる。アイデアと資金があり、プロトタイプまでうまくいっても、量産段階までたどり着くための技術の蓄積が少ないからだ。月面探査レースに挑戦し、現在は月面資源開発のプロジェクトを進めるispaceにも苦労があった。

 また、ユカイ工学(同新宿区)の青木俊介社長は、「最初に試作機を作る時の『作りたい思い』が大事」と話した。同社は、しっぽのついたクッション型いやしロボット「Qoobo(クーボ)」などを展開する。最初の熱意が、協力先やユーザーとの関係構築にもつながる。量産へのステップに加え、市場投入の前にユーザーなどのニーズを吸い上げて商品をつくりこむためにも、協力者は不可欠だ。

 手首に付けて動きなどを測る機器「モフバンド」を展開するMoff(同千代田区)の高萩昭範社長は、「協力者集めはトップの“足”で稼ぐ」とこつを語った。同社は子ども向けのおもちゃとしてモフバンドの提供を始めたが、研究機関などからの声がかかり、ヘルスケア向けサービスを開発した。ただ、研究機関が実際のユーザーのニーズや使い勝手を全て知っているわけではない。実証実験の協力者探しでは、「当社は小さな会社だが、トップが来れば相手の人たちは喜んでくれた」といい、信頼関係をつくる効果は高いという。

日刊工業新聞2018年6月27日

梶原 洵子

梶原 洵子
06月28日
この記事のファシリテーター

モノづくり系ベンチャーと技術力のある中小企業を結びつけるサービスも増えています。おもしろい会社が増えていってほしいです。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。