ニュースイッチ

ハイテクと歴史が隣り合う、インド・ハイデラバード

IT人材を求め、世界中から資本が集まる
ハイテクと歴史が隣り合う、インド・ハイデラバード

ハイデラバードのスタートアップ企業「スマート・オート」

 インド南東部にある、アーンドラ・プラデーシュ州の州都・ハイデラバード。空港から車を走らせると、米マイクロソフトや米グーグルなどの巨大なオフィスが連なり、まるで、米国のシリコンバレーのような街並みが突然現れる。

 この一角は「ハイテク・シティ」と呼ばれ、インドの他の市街地とは全く違った様相を呈している。きれいに整備された区画には、ゴミ一つ落ちておらず、ヘッドフォンを付けたエンジニアと思しき若者が街を歩く。一見、インドとは思えない光景だ。

 近年、世界の名だたるIT企業が、このハイデラバードに巨大なオフィスビルを構えており、日本企業でも日立ソリューションズが開発センターを置いている。こうした企業の集積は、州政府の誘致の成果だ。

 アーンドラ・プラデーシュ州では、州首相が中心となり、企業誘致に加え、大学など教育機関でのIT人材の育成や、スタートアップ企業への支援など、IT政策を推進してきた。この成果の一つが、ハイテク・シティであり、州全体の発展にもつながっている。

 ハイデラバードに立地するスタートアップ企業の一つが「スマート・オート」だ。スマート・オートは日本の大手商社、三井物産が出資し、自動車整備の支援システムを開発、提供している、IT企業。オートに出資するインド三井物産の今城亮祐副部長は、ビジネス拠点としてのハイデラバードのメリットを「スマート・オートのビジョンに応じて入ってくる有望な若手IT人材を集められること」と話す。

 ハイデラバードは、IT人材を今後も輩出し続け、これを求めて、世界中から資本が集まり、街を形成するビジョンの真っ只中にある。

 ハイデラバードには、ハイテクシティと全く異なる街が、ほぼ隣り合わせに並んでいるのが特徴だ。「旧市街」と呼ばれる、その一角は、イスラム教が多く住んでおり、街中には黒ずくめの女性が歩いている。

 旧市街の中心部にあり、街のシンボルともなっている寺院「チャールミナール」は、16世紀に栄えた、ゴールゴンダ王国時代に建設された建造物。4つの光塔が特徴で、ハイデラバードのみならず、インドを象徴する建造物の一つとなっている。


 チャールミナールの周辺には、インドの女性の衣服「サリー」や貴金属を売る、店舗が並び、終日、ムスリムでごった返している。ハイデラバードで、いわゆる、インドの喧噪を感じられるのは、この旧市街といえるかもしれない。

 夜間はライトアップされ、幻想的な雰囲気になるのも、見所の一つだ。

 ハイデラバードに日本からの直行便はない。日本からインドに直行便を運航している、エア・インディア、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)のいずれかで、デリーかムンバイを経由することになる。

 エア・インディアは主要空港の国際線ターミナルに国内線も就航しており、ANAやJALが国際線を乗り入れるターミナルから、インド各地を結ぶ国内線を発着している。インド各都市への接続には利便性が高い。

 エア・インディアはハイデラバードから、国際線で3都市、国内線で15都市を結ぶ。ハイデラバードから、国内の各都市に移動するのも便利だ。

 ハイデラバードはIT関連企業を中心に、日本企業の進出も増えている。ハイテク・シティの静けさと、旧市街の喧噪が隣り合うハイデラバードは、現代のインドを表す、象徴的な街と言えそうだ。
ハイテク・シティには世界の巨大企業が集積する

旧市街のシンボル「チャールミナール」

インドでも最大級、ハイデラバードでは最大のモスク「メッカ・マスジド」

エア・インディアは国際線ターミナルに国内線も就航、各都市に乗り継ぐには便利
ニュースイッチオリジナル
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
旧市街とハイテク・シティは全く様相が違い、同じ国とは思えないほどでしたが、これが今のインドを象徴しているなと感じました。

編集部のおすすめ