全方位戦略は奏功するか?―名門・スミセイの賭け

海外事業を担う人材の育成も進む

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生命保険大手4社が海外事業を積極化している。長期的に人口の縮小が避けられない日本市場とは対照的に、アジアを中心に成長の余力の大きい海外市場を取り込み、収益構造を多角化する狙いがある。ただ、背景は同じでも実際の取り組みには4社間で徐々に差が生じてもいる。各社の海外戦略を追った。最終回は住友生命保険。

 大手生命保険4社の中で海外投資の枠を唯一設定していない住友生命保険。海外戦略は他社に比べてより慎重な姿勢を貫くが、成長戦略として海外事業を位置づけるのは国内他生保会社と変わりない。投資枠を設定していないからこそ、1件ごとにじっくり検討できるともいえる。今後に備え、課題となる海外事業を担う人材の育成も急ピッチで進む。

 【アジア3カ国】
 現在、同社の進出先はアジアの3カ国。2005年に中国で現地保険会社との合弁で中国人民人寿保険(PICC生命保険)を設立したのを皮切りに、13年はベトナムのバオベト・ホールディングス、同年12月にはインドネシアのBNIライフ・インシュアランスの株式約40%を取得することで合意した。
 
 PICC生命はこの10年で新契約収入保険料において、中国で上位5位以内に食い込むなど大きく飛躍。既存出資先は3社とも着実に成長している。ただ、利益に占める割合では、利益への貢献度合いでみると、海外事業が30%を占める第一生命保険と比べると本格的な収益貢献はまだ先になる。長期間をかけ、じっくりと事業を発展させる構えだ。
 
 【常に模索】
 直近で投資案件は出ていないが、成長の機会は常に模索している。実際、中期経営計画では他社と同様に成長戦略の中に海外事業を位置づけ、グループの収益基盤の多角化や企業価値の持続的成長を目指す考え。過半出資についても選択肢から除外していない。
 
 進出先については、世界の保険市場で最も成長性が期待されるアジアを中心に、広く案件を検討する。生保市場は地域によって成熟度合いも異なるため、欧米のような成熟市場も視野に入れ、地域分散をきかせて海外事業のポーフォトリオを構築していく。
 
 ただ、アジア市場となると日本の大手損保を含め、世界中の保険会社が案件を模索している。「この1、2年は(出資案件の)価格が高騰している面はある」と、河野伸三執行役常務は話す。
 
 一方、課題となる人材育成も本格的に始まっている。14年から3年間で情報技術や商品開発、アクチュアリーなどの領域で語学力を備えた人材を100人育成する計画だ。年間20人ずつ英語を集中教育し、すでに初年度の卒業生の中には海外赴任した従業員もいる。同時に若手を対象に10数人をMBA取得や語学の研修に派遣と、育成は順調に進展しているという。
 
 【技術支援へ派遣】
 同社が進出先の中心と位置づけるアジアでは保険市場が未成熟な地域が多く、制度を含めたインフラが整備されるのはこれから。このため、日本などの外資企業は現地企業から生保事業に必要なノウハウが要求される。
 
 住生もすでに商品開発におけるノウハウの移管などで一定の成果事例が出ている。出資先企業の技術支援ができる人材を派遣し、提携企業との関係を深めることも今後の海外戦略の上で大きなカギになるという。今後も新規の進出先の模索と人材育成を平行で進めながら、海外戦略を推進させる。(おわり)
 ※ニュースイッチ初回公開=7月16日

日刊工業新聞2015年7月10日金融面

COMMENT

栗下直也
編集局経済部
編集委員

国内4位の住友生命は国内ではショップを展開するほか、ネット生保にも参入。3位の明治安田生命が原点回帰で営業職員の販路に経営資源を集中投資して強化するのとは対照的です。選択と集中が正しいのか全方位戦略が正しいのか。10年後の業界地図が楽しみです。

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