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“もう一つのブラジル五輪”に挑む。若き情報ネットワーク施工の名手

技能五輪国際大会「サンパウロ」出場選手紹介。きんでん・島瀬竜次選手
“もう一つのブラジル五輪”に挑む。若き情報ネットワーク施工の名手

島瀬選手

 2年に一度、世界の若者が集まり、モノづくりの技を競う技能五輪国際大会。8月11―16日にブラジル・サンパウロで「第43回技能五輪国際大会」が開かれる。「モノづくりニッポン」を代表して同大会に臨む主な選手を紹介する。
 

きんでん 島瀬竜次選手


 きんでんの島瀬竜次さんは、埼玉県立三郷工業技術高校の出身。地元から遠く離れた兵庫県西宮市内の研修施設で、練習漬けの日々を送っている。技能五輪を目指す選手として社内選抜されてから4年目。まもなく集大成の時を迎える。

 大舞台を目前にしていても、終始笑顔で質問に答えていたのが印象的。「目標は金メダル」と気負いなく、さらりと言ってのける。プレッシャーを心配する必要はなさそうだ。

 入社後の研修で技能五輪に取り組む様子を見学した時、先輩たちの姿にあこがれた。年齢制限があるのを聞いて詳細を知らないまま「今しかない」と、選手募集に手を挙げた。

 指導する伊藤進さんは「彼らの世代は平凡だが、まじめ。取り組む姿勢が良かった」と評価する。最初の挑戦は、まさかの予選会落ち。これで技能五輪に挑戦する道は絶たれたように思われた。予選後、通常は現場に配属される。島瀬さんも「僕もそうなる」とうなだれた。だが会社はチャンスを与えた。

 「おまえは残れ」。1年間、全国大会の出場資格はないが、同じように訓練できる環境に置かれた。島瀬さんは先輩たちに追いつきたい一心で、ひたむきに取り組み、メキメキと力を付けた。13年千葉大会で敢闘賞、14年愛知大会で金メダルを獲得し、サンパウロへの切符を手に入れた。

 島瀬さんには心強い先輩がマンツーマンで指導に当たっている。前回ライプチヒ大会の金メダリスト宇都宮晋平さんだ。宇都宮さんも「現地で初めて触れる材料もある。予期しないトラブルがある」との経験を伝える。

 情報ネットワーク施工職種は19カ国・地域の代表が出場する。3月には中国で中国、マカオ、香港、開催国ブラジルの選手と合同訓練に参加。慣れ親しんだものとは異なる材料に苦しんだ。「あたふたしたまま、うまく作業ができなかった」と反省。本戦に向けて良い発奮材料となった。

 「体調管理をしっかりして、練習通りの力を発揮したい」と意気込み、好物の刺し身もしばらくは自制する。将来の夢は「国際大会の経験を生かして後輩を指導できるような、第一線で活躍する技術者」。大会に向けて、きんでんも全社を挙げてサポート。“チームきんでん”の思いを地球の裏に届ける。
 (文=小林広幸)
 
 【情報ネットワーク施工】
 建物構内の電気通信工事、光ファイバーとLAN(メタル)の施工技術を競う。インターネット社会の進行で、情報通信インフラの信頼性は産業・生活に欠かせない。国内では2004年岩手大会から、国際大会は05年ヘルシンキ大会から開催種目となり、日本代表が5連覇中の“お家芸”。前回ライプチヒ大会の金メダリスト宇都宮晋平選手(きんでん)は、大会通じた最高得点者に贈られる「アルバート・ビダル賞」も日本人で初めて受賞した。

※日刊工業新聞では「技能五輪国際大会・サンパウロの星たち」を連載します。
日刊工業新聞2015年07月14日 モノづくり面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日本大会も開催していますが、生でこれを見ると熱い思いがこみ上げてきます。

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