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2030年の「心豊かなライフスタイル」~未来のあたりまえを考える~vol.4

モノづくり日本会議「ネイチャー・テクノロジー研究会」主催 第3回コンテスト入賞作品紹介
2030年の「心豊かなライフスタイル」~未来のあたりまえを考える~vol.4

「新しいものをつくるはこ」

 環境・エネルギー制約が頂点に達するとされる2030年をターゲットに、地球環境やエネルギーの問題を考えながら、心豊かな未来の情景、人間らしいライフスタイル(暮らし方、生活シーン)を表現する。厳しいからといって単にがまんをするだけではなく、わくわくドキドキするために必要なモノ、技術かを探る。その答えを自然の中から見つけ出すことがコンテンストの目的。子どもから大人、専門家など幅広い層から寄せられた応募作品は201件。入賞した11件を順次紹介。最終回は審査委員長の石田秀輝東北大名誉教授の講評もお届けします。

「新しいものをつくるはこ」【YKK AP ハッピーライフ(HAPPY LIFE)賞】


 前川桃子さん(東京都中央区・8歳)

 わたしが考えた未来のあたりまえはごみばこの中のごみをつかって、新しいものをつくると言うことです。

 まず、ごみばこにすてたごみをトラックではこび、はこの入口にいれ、出口に新しいものができたら、またトラックでリサイクルの店にはこんで、そこで売られます。はこの中みでは3体のロボットがごみを新しいものにかいぞうしています。たとえばスコップがごみだったら、つかえそうなぶ分をとって、きれいにみがき、色をかえます。そして、かたちをととのえて、こまかいぶ分をつくります。そうしたらペンなどになります。それで出口からペンが出てきます。

 わたしはこういうせかいができるとごみがへるし、また、ほしい人がかってまたつかえるからです。15年後にほんとにこういうせかいになっていたら町がきれいになって、しぜんがおおくなってきれいだと思います。

―CO2フリー、心豊かな暮らし― “鎮守の森”と“水素ステーション”を囲むコミュニティ【日刊工業新聞社賞】


 伊藤一路さん(大阪市住吉区・69歳)

 わが国はその昔から里山や鎮守の森を中心に自然と向き合った暮らしを築いてきたが、経済成長が便利な人工的空間を生み出した半面、自然を破壊し地球温暖化による地球規模での大きな環境問題が浮上した。自然環境を守る新しいライフスタイルとして、究極のクリーンエネルギー“水素”を核に、近隣住民が集う里山と鎮守の森を参考にしたコミュニティを提案する。

 具体的には、中心部に水素製造設備と水素ステーションを設置するとともに“火の神”を祀る。水素は、太陽光パネルで発電し、疎水の水を電気分解して製造する。住宅・店舗・施設すべてに水素をパイプラインで供給、タウン内の車両はすべて燃料電池車(緊急電源にもなる)にし、水素エネルギーの製造から消費までCO2排出をゼロに近づける。多目的ゾーンは、Face to Faceの近所づきあいを促すイベント広場として活用する。コミュニティ全域は、四季を愛でる樹木と鯉・メダカが泳ぐ疎水で囲み、車道・歩道・自転車道を完全分離する。

 美麗な水と空気と樹木に囲まれた水素コミュニティが、2030年の心豊かなライフスタイルとなる。

【審査委員長講評】ネイチャー・テクノロジー研究会コーディネーター・石田秀輝東北大学名誉教授


 テクノロジーは心の豊かさのために
 ライフスタイルコンテストも3回目を迎えた。子供たちの参加も多く、毎回楽しませて、そして勉強させていただいているが、鉄腕アトムやガンダムのような、あるいはスーパーマンのようなヒーローが登場して、地球環境問題を一気に解決してくれるような提案は今年も1件もなかった。テクノロジーの限界を本能的にでも感じているのだろうかと考えることもしばしばである。

 テクノロジーの役割は人を豊かにすること。これ以外にはない。では、今求められている豊かさとは何か?日本では、すでに1980年代半ばから「もの」より「心」の豊かさを求める生活者が増え続け、車より自転車のほうがカッコイイと感じ、週末のアウトドアや家庭菜園がおしゃれだとブームになっている。

 明らかに、豊かさの価値観が精神的なものに移行しており、今回の応募提案のほとんどがそれをますます強く感じさせるものであった。それは、自然を基盤とし、自足を含む身の丈の暮らしの中に豊かさを見つけ出そうというもので、テクノロジーはそのための道具という位置付けであるように思った。

 優秀賞の「DIYでちょっとずつ創エネ -エネルギーを創る楽しみ、使う楽しみ-」は、まさに、自然-暮らし-エネルギーの関係を自分の知恵や技で楽しむという提案である。少しずつでも自分で使うエネルギーは自然の力を借りながら自分で創り、ご近所にも貢献するという、何とも微笑ましい世界が見えてくる。

 大賞の「木材と共に成長する家」は、自足の概念を次の世代へまで伝えようとする提案である。ともすれば、今この時の自足を考えることは多くとも、自分の子供や孫のことまで考えた時間軸の長い提案は新鮮で、とてもモダンに見えてくる。

 「『金の卵』と呼ばれたい」は、審査委員全員一致で審査委員特別賞を設けることにした。この提案は80歳になってもしっかりと働き、年金が少ないと文句を言うより、元気に働いて所得税を納める婆ちゃんでありたい、という暮らし方の心の置き方そのものの提案である。提案の文章を読ませて頂きながら何だか嬉しくなってしまう。他の審査委員も同じ気持ちになったのだと思う。

 個人的には、「農業の日」も印象に強く残った。食育も大事であるが、そもそも食を育て考える日が必要であるという提案はまさにその通りである。

 今回も、たくさんの応募を頂いた。選に漏れた応募作品も素晴らしいものであったことを付記したい。




明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
来年も未来を感じる作品を期待しています。

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