【連載・沖縄でつくる#01】なぜ“不毛の地”に製造業は進出したのか

エフエムディ、カテーテル手術用ガイドワイヤの生産拠点に 

 沖縄県の経済特区への企業誘致が好調だ。県中部の「国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区」の立地企業数は2018年3月末で67社となり、前年から9社増え過去最高の企業数を記録した。立地の形態にも変化が見られる。これまでは賃貸工場への入居がメーンだったが、分譲地への進出も多くなっており、分譲地不足の懸念すら出始めた。

 沖縄は製造業の“不毛の地”という不名誉な呼ばれ方もあった。事実、県内総生産に占める製造業の割合は低下傾向で、この10年間はおおむね4%台で推移する。好調な観光がけん引し、伸びを見せる建設業やサービス業とは対照的だ。だが、沖縄でモノづくりをする企業は確実にいる。なぜ「沖縄でつくる」のか。立地企業から答えを探る。

増産支える「人の手」確保


 「成長のカギは沖縄が握る」。エフエムディの寺師剛社長は、2月に開設した沖縄工場への期待をこう表現する。同社は血管にワイヤを通し治療するカテーテル手術用ガイドワイヤのメーカー。将来の主力工場と位置付ける拠点を約10億円を投じて新設した。

 沖縄を選んだ理由は人材確保。現在、需要増に応えるため生産能力を大幅増強する局面にある。手作業が不可欠で能力増には採用増しかない。だが本社・工場のある埼玉、生産と研究開発を行う愛知では、派遣社員の採用も苦労するほど深刻な人材難。全国を探してたどりついた解が数少ない人口増加地域である沖縄だった。

 新工場は、うるま市の経済特区内にある分譲地に建てた。「土地は安くないが、投下固定資産や若年者雇用への補助と合わせれば十分魅力的だった」と寺師社長は説明する。

 ただ、人口は増えているとはいえ沖縄も採用競争が激化しており懸念はあった。しかし今のところ心配は杞憂(きゆう)に終わっている。女性を中心に社員・パートで約30人を地元雇用。観光・サービスの求人が多い中、「きれいな環境でコツコツと作る」分野に興味を持たれ選ばれていると感じる。

 沖縄ではワイヤ先端部「コア」の研磨加工や組み立てを行う。当面は半製品の出荷だが、いずれ最終加工まで手がけ、直接輸出を見据える。また現施設で100人体制を実現後は、22年以降をめどに、隣接地でさらに100人規模の設備増設を進める。全社の生産規模は現在の2倍超になり、沖縄はその3分の2を占める最大の生産拠点になる計画だ。

【企業概要】▽企業名=エフエムディ▽本社=埼玉県戸田市▽代表者=寺師剛社長▽製造品=医療機器


沖縄県企業誘致セミナー 7/19大阪、7/20東京で開催
エフエムディ沖縄工場。すでに隣接地での増設計画もある

日刊工業新聞2018年6月14日

三苫 能徳

三苫 能徳
06月15日
この記事のファシリテーター

「不毛の地」とはひどい言い方だとは思いますが、離島県であることによる調達や物流におけるコスト高、県内市場が小さいことによる非効率性など、製造業が大きく育たなかった背景は理解できます。一方で中小規模の事業者を中心に、沖縄で新規立地する企業が増えていることも事実。なぜ立地企業はモノづくりの場に沖縄を選んだのか、連載を通して探っていきます。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。